※雪村成り代わり・女主
吹き荒れる吹雪の中で、激しく動き回る藍色の何かが見えた吹雪は、ふっと優しく笑みを零した。
まったくあの子は、相変わらず加減を知らないんだからもう。
いつになったら学習してくれるんだろう。
呆れたように吐き出した溜息だったが、近づくに連れてその全てが愛しく思えて。
ちょっとした出来心で、藍色が立ち止まった時を狙って―――――
「ひゃあっ?!!
え、何事ッー?!」
「あはは、かわいいねなまえ」
「え、……吹雪先輩ッ?!!!」
背後から視界を奪うように、手を掛けてみると、思ったよりもオーバーなリアクションが返って来た。
それがまたおもしろくて、吹雪はさらに満足顔である。
吹雪の後輩で、教え子でもある雪村なまえは、どんなときでも全力でやらなければ先には進めない、という考えの持ち主であった。
涼しげで繊細な顔立ちとは裏腹に、熱すぎる性格。
それが火種となり、チームメイトとの温度差が生じ、理解されないが故に隔絶が最近まで生じていた。
吹雪と同じで、白恋中サッカー部のエースストライカーであるなまえは、濃い藍色の跳ね上がったショートヘアが特徴的で、たまにそれが何かの動物の耳に見えて、吹雪は勝手に悶えていることも多々あった。
だってこの子、かわいすぎるんだもん。
24にもなる大の大人が言うのは気持ち悪い?
自分を制御出来ないのだから仕方がない。
「相変わらず早いね、感心感心」
「ふ、吹雪先輩こそ…
あ、おはようございます!」
「うん、おはよう」
早速藍色の犬耳が見えたのは間違いない。
大きく左右に揺れている尻尾も見える。
吹雪は自分がなまえに気に入られていることを自負している。
だから、懐いてくれるのは素直に嬉しい。
でも、僕我慢出来るかなあ。
ほら、褒められたから嬉しそうに笑ってる。
なまえは言葉には出さないけど、顔と行動に出やすいんだよなあ。
そんなところが、半端なくかわいいのだ。
「今日は天気悪くなるって言ってたから、もう止めようか」
「え…」
「みんなには休みって伝えたんだけど、
きっとなまえにはメールより直接言いに言ったほうが早いと思ってね」
「…!あ、わ、す、すみません!!」
「夢中になりすぎは禁物だよ?なまえ」
「はい……」
怒られた。
いや、迷惑かけちゃった、が多いかな。
さっきまで見えていた耳と尻尾は垂れ下がっているように見える。
もう、僕末期だよなあ。
一人考え込んだ吹雪を見て、心配そうに覗き込んできたなまえ。
大丈夫大丈夫、なんでもないよ、と頭を撫でてやると、なまえは恥ずかしそうに下を向いてしまった。
「もう、かわいいなあなまえは」
「か、かわッ?!!」
「あれ、声に出てた?」
「ふ、吹雪先輩っ、な、ななにを言って?!?!!」
「あれー?なまえ大丈夫?」
「……じょ、冗談は止めてくださいって、言ってるじゃないで、すか…!!」
「冗談じゃないよ」
あれ、からかいすぎたかな?
つい本音が漏れてしまった吹雪は、まあいい機会だしと正直に口に出したところ、なまえはみるみる真っ赤になっていく。
そういえば、この子ウブなんだった。
「もう!吹雪先輩!!」
「ごめんごめん」
「心がこもってないです!!」
「ごめんね、なまえ」
吹雪が精一杯の優しい声を出して言ってみると、なまえが動かなくなった。
あれ、どうしたの?
今度は吹雪がなまえの顔を覗き込むと―――――
「ふ、」
「ふ…?」
「ふ、吹雪先輩のイジワルーッ!!!」
さらに顔を赤くしたなまえは 逃げ出した。
視線ひとつで死ねるこの幸せを知るまい(かっこよすぎるんだよばかぁああ!!)
(あー、もうかわいいなあ)
遅くなってしまい、申し訳ありません!
完全に管理人得。
甘々って、どんぐらいなんだろう。
もうちょっと糖分が必要ですよね、ちょっとどころじゃないな…角砂糖10個分くらい、かな…申し訳ありません。
思ったよりも短くて…今自分におどろいています(;´∀`)
リクエストありがとうございます!前サイトの2周年企画:優祈さまのみフリーでした。
お題:alkalismさまより
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