成代 | ナノ









※信助成り代わり・女主





程よく陽が差し込む窓際の席でうとうとと、船を漕ぎそうになる。

ダメだ、身体に力が入らない。

意識は閉じてしまいたいくらい重たい瞼を開こうとしているのだけど、既に身体は言うことを聞かなかった。

これだから、図書館での自習は嫌なんだ。

静寂、自由、いくつものいいことが重なって出来るその環境は、寝るにはもってこいの場所なのだ。

今回の監督の先生も、周りのクラスメイトも何人か、既に意識を手放しているけど、やっぱり起きてなきゃ。

自分の中の天使が言うと、何処から音もなく現れた悪魔が囁く。

部活の時間を頑張る為にも、体力を回復させるべきだから、寝ちゃえ。

でも、やっぱりそれはちょっとなあ。

自分は天使を選んだ。



西園なまえは、睡魔という目には見えないタチの悪い相手と、戦っていた。

席は自由だと言われたからなのか、隣には松風天馬が、目の前には空野葵が座っている。

同じ部活だからなのか、クラスの中では一番仲のいい二人である。

起きなきゃ、なまえは一回うーんと背筋を伸ばした。

ちら、と見えた隣では、天馬が既に机に突っ伏して寝ていた。

本当に、嬉しそうな顔をしている。

夢の中でも、大好きなサッカーをやっているのだろうか。

いいなあ、自分も寝てしまいたい。

そう考えると、直ぐ様また悪魔が現われようとする。

いや、悪魔なんかに従ったらダメだ。

なまえは目の前の数式に、改めて向き合った。

………む、難しい。

そういえば、同じところをやっているはずの葵は、どこまで進んだのだろうか。

ちらり、と盗み見るように葵へと視線を送ると、葵は船を漕ぎ始めていた。

時々かくんと揺れる首の反動に、ぴくりと肩が揺れている。

頑張れ葵!負けるな葵!

そんな思いを込めて視線を送っているなまえに気が付いたのか、葵と目が合う。

すると、寝顔を見られたのが恥ずかしかったのか、葵は顔を真っ赤にして、声にならない叫び声を上げた。



「み、みた…?」



これは、見てないと答えるべきなのか。

可愛い寝顔だったけどなあ。

なまえは、人の良さそうな笑みで、首を横に振った。

なまえのさりげない優しさが、余計に葵を傷つけていたなんて、なまえは知る由も無かった。



「葵、どこまで終わった?」
「………あ、えーっと、全然、かな…」
「そっかぁ」



ひそひそと、小さな声で話し合う。

周りを見てみると、自分たちと同じように、小さな声で相談しあっている姿も見えた。

もちろん、天馬のように机と仲良くしている姿もある。

いいなあ。

おっと、危ない危ない。

悪魔が出てきてしまうところだった。



頑張って数式とたたかうことを決意したなまえは、再びプリントに向き直った。










授業は終わりに差し掛かる。

と、いっても、授業らしい授業はしていないし、ただ自習をしていただけなのだけど。

あれから、格闘しつつも無事にプリントを終えることが出来た葵は、席を立った。

ここは図書館。

暇潰しにはもってこいの場所だからだ。

同じくプリントを終えたなまえは、本を読む気分ではないらしく、学習道具を片付け、ただぼーっとしていた。



「天馬、まだ起きないなぁ」



つんつん、と頬を触ってみると、くすぐったいのか、少し天馬の身体が動いた。

いいなあ、わたしも寝たかった。

今度はそんな思いを込めて、強く触ってみる。

つんつん、つんつん、つんつ…。



「ふわぁあ…」
「おはよう天馬、ぐっすりだったね」
「?………ッ!」



葵と同じように、顔を真っ赤にした天馬。

天馬まで、女子みたいな反応しちゃって。



「天馬、顔真っ赤だよ」
「お、俺…」
「うん?」



何だか下を向きながら、モジモジとする天馬。

照れてるのかな?うん、何に?



「ほら、天馬、シャキッとして」



サッカーやるんでしょう?















風待ちの睫毛


なまえには目の前の天馬の顔が、みるみる明るくなっていくのが分かった。

それから、チャイムと同時に二人で駆け出したのは言うまでもない。

背後から、「まだ一時間あるよー!」と葵が叫んでいたのには、気が付かなかったのだから。












全く、内容がない。
まあいつも通りか(笑)

ほんとはサッカーやらせるつもりだったのに、どうしてこうなった…!
しんすけはやさしい子だけど、顔に出やすい。
つまり素直なのだけど、純粋すぎて困り者になるのも多々…

な、感じです。



お題:alkalismさまより


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