※虎丸成り代わり3・女主
ライオコット島に降り立って、幾日か経った頃。
気晴らしにでもなるだろうと、マネージャーさん達の粋な計らいで、1日休みになった。
家族にお土産を買ったり、外国エリアを見て回ったりと、みなさん思い思いに出掛けて行ったみたいだけど、わたしは直ぐ宿福に帰って来てしまった。
お母さんや乃々美お姉ちゃんへのお土産は、かなり悩んで買ったし、それなりにエンジョイして来たつもりだったけど、一時間もしないうちに帰って来てしまったのだ。
ここのところ何か、物足りない。
アジア予選を勝ち抜いて、ライオコット島に来たことで、もう何日も家を―――店を離れてしまった。
お母さんが、店が心配で、軽くホームシックになりかけた。
(ううん、それだけじゃない)
サッカーの次に大好きな料理が、出来ないからだ。
豪炎寺さんのお陰で“楽しい”サッカーが出来るようになったと思ったら、今度は料理が出来ない。
自分のために、サッカーをするために、ライオコット島にいるわけだから、嫌なわけじゃあないんだけど。
毎日、ご飯を食べることと同じくらい当たり前にやってきたことだから。
空腹になるとか、呼吸出来なくなるとか、それくらい重要なことで。
(料理、したいなぁ…)
お米の一粒一粒が立っているような白いご飯に、具沢山の味噌汁。
寄宿舎の、マネージャーさん達が作ってくれるご飯も美味しいけれど、やっぱり料理は自分で作った方がやりがいとかあるから…。
新しいメニューの案を考えていると、自然に笑顔になってしまうわたしは、もう末期だ。
こんな小学生、気持ち悪いよなあ…。
嗚呼、でも………早く試してみたい。
**********
「あの、よかったんですか…?」
「なまえちゃんだって、女の子でしょう?
全然大丈夫だよ」
「そうですよ!
そ・れ・に!なまえちゃんがいれば、百人力です!」
「そ、そんなこと…」
「ありますよ」
休みのはずなのに、結局は皆さんサッカーをし始めてしまい、夕方近くになっていた。
お昼は各自で調達して食べたはずだけど、わたしが見ている限り、皆さん午前中からぶっ通しでフィールドを駆け回っている気がして。
わたしも最初こそは混ざって練習をしていたのだけど、明日に疲れが残ってしまっては元も子もないので、クールダウンをしようと、ジャパンエリアを歩いて居たとき。
―――――宿福から心配そうに見つめるマネージャーさんたちが見えて、少し心配になったわたしは、宿福に戻った。
すると、マネージャーさんたちは差し入れにとおにぎりを作っていたようで、気が付いたらわたしも混ざっていた。
うん、ただお米を握っただけのおにぎりだけど、なんだか楽しい。
ひょっとしたらサッカーをしているときと同じくらい、楽しいかもしれない。
(やっぱりわたし、料理好きだなあ)
和気藹々と、いつもは出来ないガールズトークに花を咲かせながら、淡々とおにぎりを作っていくわたしたち。
すると、冬花さんが心配そうな顔で、口を開いた。
「おにぎりだけで、足りるかなぁ」
さっき抜けてきたわたしでさえ、お腹が空き過ぎて、実はさっき二個程おにぎりを貰って食べたばかり。
ましてや他の選手の皆さんは、男の子なわけだから…わたし以上にお腹が空いているだろう。
(やっぱりマネージャーさんたちはすごいなあ)
(選手のこと、すごくよく分かってる)
(感謝しなきゃなあ)
「そ、そうですね…みなさん、ずっと動き回っているみたいですから、足りないかもしれませんね‥」
「一応、ドリンクも準備はしたんだけど…やっぱり水分だけじゃ、お腹は膨れないしね」
その会話を聞いていたわたしは、一度時計を見てから、握っていたおにぎりを作り上げると、漸く口を開いた。
「あ、あのぅ…
わたし、何か作りましょうか‥?
夕食には差し支えない程度に軽いものなら、直ぐ作れるので…」
迷惑かも、しれない。
でも、わたしだっていつもマネージャーの皆さんに支えて貰っているのだから、少しでも役に立ちたい。
ただ、その一心で。
勇気を振り絞って、声に出した言葉に、眩しい程の笑顔でマネージャーさんたちが振り返ってくれたのを見て、わたしはすごく嬉しくなった。
「やっぱりなまえちゃんは凄いわ!」
「同じ女の子として、憧れます!」
「ありがとう、なまえちゃん」
「えへへ、」
**********
作り慣れていて、直ぐに食べられるものといったら、わたしの場合卵焼きで。
なんか、ピクニックみたいになっちゃったなあと思いながらも、塩味と甘い味の二種類を作って持っていった。
卵は一日に摂る量は、大体一個程。
摂り過ぎはあまりよくないのだけど、まあ、今回は仕方がないということで。
「一つか二つ迄にして下さいね、あんまり作ってないので」
「え? これ、なまえちゃんが作ったの?!」
「すっごくうまいでやんす!」
「あ、ありがとうございます…!」
「マーク!これはライスボールじゃないかい?」
「ああ、そうだな」
うん?
今聞き慣れない声が聞こえたよう、な…
「ユー!これ、ミー達も貰っていいかい?」
「え?
あー…はい、どうぞ
お口に合うかどうか、分からないですけど」
「やっぱりジャパニーズは謙虚だな」
「ミー知ってるよ!
ヤマトナデシコって言うんだろ?」
「は、はい…たぶん‥‥‥‥‥?」
どうやら、敵味方、関係なく仲良くなってしまう円堂さんの影響で、いろんな国の選手の人も集まっているらしかった。
やっぱり、サッカーは誰とでも分かり合えるんだなあ。
「あ、なまえ!
後でもう一回練習しないか?
マークやディラン達と一緒に!」
「Oh!ユーがなまえ?!
噂に聞いてるよ!
FFI唯一の女子選手だろ?」
「超絶テクでDF3人をごぼう抜きしたって聞いたな」
「あ、はい…」
―――――見てみたいな!
そんなわけで、わたしも皆さんに混ざってサッカーをしたわけだけど、結局日が暮れてヘトヘトになるまで、気が付かなかった。
やっぱりわたし、サッカー好きだなあ。
料理と同じくらい、ううん、どっちも好きなんだ!
虹は透けるもの(嫌と思っても、これから好きになれるんだと、前向きに考えよう)
(だから、好きなものは、もっと好きになれるんだ!)
内容がない(;´∀`)
そして、キャラが恐ろしいくらい絡んでいない。
お題:alkalismさまより
11_07_07
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