※音無成り代わり2・女主
「音無、」
「はい!
なんでしょうか、豪炎寺先輩?」
「新しい必殺技についてなんだが…」
サッカー部のデータ管理はわたしの仕事。
こればかりは誰にも譲れないし、負けたくはない。
少なからずこれだけはプライドがあるので、わたしは自分が必要とされたときは、いつも以上に気合いを入れて頑張る。
べ、別にいつもが手を抜いてるわけじゃないけど!
「どうも、いまいち威力が上がらないんだ」
「そう、ですね…
‥‥ファイアトルネードを例に挙げると、豪炎寺さんはいつも……なんです
でも、今度の技は……なので…」
「! …ということか!」
「はい、そうすれば少しは威力が上がると思います」
「さすがだな、音無
それでもう一度やってみる」
「いえ、わたしは何も」
そう謙遜するな。
と、優しく笑いながら、わたしの頭を撫でた豪炎寺さんは、“お兄ちゃん”の顔をしていた。
やっぱり、お兄ちゃんは優しいものなんだろうな。
(あれ、お兄ちゃんのときはこんなにドキドキしないのに)
(なんでだろう…?)
ふいに大きな音を響かせながら、鼓動を刻み始めた左胸の辺りをきゅうっと抑えながら、ベンチに戻る。
すると、まだちらほらと休憩中の先輩達が居て、わたしは秋さんと冬花さんの元へ急いで戻った。
あ、今日は夏未さんもいる。
「何か手伝えること、まだありますか?」
「なまえちゃんは十分働いてくれてるんだから、こっちは全然大丈夫よ」
「そうですよ、音無さんの分まで私たちで頑張りますから」
「そ、そんな…悪いですよ!」
「人の好意は有り難く受け取っておくべきよ」
「な、夏未さんまで…」
いくらデータ管理や、情報収集、処理が量の多い仕事だからといって、わたしばかり皆さんに頼るわけにはいかない。
第一、わたしは一番年下なのに。
り、理事長さんの娘さんの夏未さんにまで手伝わせてしまうなんて。
「もう、なまえちゃんは気を遣いすぎよ」
「そうですよ、そんなに頑張り過ぎなくたっていいんですから」
「第一、貴方がこれ以上仕事をしてしまったら、わたしたちの仕事が無くなるわ」
「! は、はい」
皆さんの優しさに甘えながら、わたしはここに居るのだと改めて感じる。
孤独を感じていたあの頃とは、比べものにならないくらい、満ち足りた気持ちで、胸がいっぱいになるの。
(幸せって、こういうことを言うんだろうなあ。)
なんて、しみじみと考えていると、ぽんと肩を叩かれる。
「あ、お兄ちゃん」
「姿が見えなくなったからな、少し心配したんだ」
「データファイルを部室に取りに行ってただけなんだけど」
「! そ、そうか」
「ふふ、相変わらずお兄ちゃんは心配性なんだから」
ありがとう、お兄ちゃん。
わたし、お兄ちゃんのお陰でたくさんの優しい人に出会えたの。
お兄ちゃんのことを追いかけて、サッカーのことを勉強しようと思わなかったら、絶対、みんなに出会えなかったと思うもの。
ラムネ瓶の中に溶かした(なまえ‥(なでなで))
(うん?どうしたのお兄ちゃん)
(消毒だ(あの白髪チューリップが‥!))
((消毒‥?わたし、けがしてないんだけどなあ……?))
((なにやら殺気が?!))
よく分からない感じに…
どうやらうちの音無ちゃんは、すぐ感動する子のようです
純粋だな(´`)
兄貴はまだシスコンパワーを全開にはしてませんね…
お題:alkalismさまより
11_06_20
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