68 春奈の様子がおかしい、と感じていながらも、私は私の仕事があるわけだから、気にしてばかりいられる訳ではない。 昼休み、有人達サッカー部の輪から少しだけ離れたところに綱吉と座って、最大限に気配察知をしながら昼食をとる。 「ファーストネーム、」 「なんだ、綱吉」 「なんだかんだいって、お前、この任務について一ヶ月経ったよ」 「…もう、そんなに経ったのか」 円堂青年の熱い勧誘を受けながらも、上手く逃げ続けてそんなにも経つのか。 通りで最近、「早く何かの部活に入れ」と教師にしつこく言われる訳だ。 綱吉から学校には話がいっている訳だが、周りに感付かれても困るからと、特別扱いは出来ないらしい。 私が有人の護衛であることを、冗談のように捉えている人も少なからずはいるし。 綱吉に至っては、表向きでの財閥の御曹司だということすら知らない人もいるのだから。 まあ、言ったところで動きにくくなっても嫌な話だが。 「…あ、そうだ なあ円堂、合宿はこの日でよかったんだよな?」 「!」 「あー、この様子だと忘れてたみたいだねえキャプテン」 有人がスケジュール帳を取り出して、円堂青年に見えるように何処かの日付を差す。 その日付を見て、驚いた顔をした円堂青年に、せっかくの綺麗な髪を振り乱す勢いで、風丸青年が叱り飛ばした。 「確か円堂、予定の提出期限、今日じゃなかったか?」 「あ、…そうだったような…」 「今日になるまで忘れてるだなんて、どういうことだよ! キャプテンなんだからしっかりしろ!」 「風丸青年は円堂青年のママンだからな」 「ああ、二週間も見てたら分かるよ」 綱吉と一緒に少しだけ笑って、またサッカー部の輪に視線を移す。 ん?今、風丸青年は何て言った? 「合宿、だと…?」 「ああ、ファーストネームには言っていなかったが 稲妻高校サッカー部恒例行事、夏の合宿が夏休みに入って直ぐにあるんだ」 「夏休みに入って直ぐ…あと一ヶ月くらいか」 「お前にも予定があるだろうし、早めに言っておこうとは思ったんだが…円堂や監督からの正式な連絡が入らないから、どうするべきかと思っていたんだ」 「…、!」 私は言葉にならない叫び声を上げた。 私の隣にいた綱吉は聞き取れたのか、苦笑している。 言い直すべきか?別にたいしたことじゃ…いや、でも 「有人がデレた!」 「! 黙れ!」 まあ、ボケは必要だしな。 prev − |