ナイト | ナノ



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「……じゃあ次、…ファミリーネーム」

「…別に名前で構わないですよ?
ファミリーネームは長いですから」

「そうか、じゃあファーストネーム」

「はい」



凄く言いにくそうに、私の名前を呼ぶ教師達を見ていて、何だか面白くなって笑みを浮かべてしまう。

その様子を見ていたらしい綱吉も、隣で笑いを堪えていた。

内心、発音超わりぃとか思っているんだろう。

窓際の一番後ろを陣取っている私と綱吉。

綱吉曰く、転校生の定番だそうだ。



「次の問14やってみろ」



傷一つ付いていない真新しい教科書に視線を移し、言われた通り問14の解答をした。


元々、育った環境が環境だったから、読み書きは嫌いだった。

仕事上、イタリア語から英語、日本語も話せるが、どうも耳から覚えたからなのか、私は文字の解釈が弱かった。

出来ない訳ではないが、時間がかかるのだ。

それから問題を解くわけだから―――――若干の間が空いてしまうのだが。



それが不自然なのではないかと気になっているのだけど

綱吉は私の事情から何やら分かっているから、若干のお世辞を言う。



「凄いね、ファーストネームくん!
転校してきたばっかりなのに、完璧だったよ!」

「そうか?
外国語だから、少し時間がかかってしまうんだが」

「え?そうなの?
全然気にならないくらい早いよ!」

「…ありがとう」



綱吉は窓側―――――つまり、私の左側にあたるのは女子生徒だった。

護衛だけの頃に、後ろで立っていることが多かったから、彼女とは面識があった。

確か、佐野美音(さのみおん)だったか。

彼女にも教師と同じ理由で名前呼びを許可したばかりだ。



彼女の一言で少し、心配事が無くなった気がした。

学生とは、なかなか難しく、そして単純なものだなと思った。





 




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