64 「なあ綱吉、一回飛んできていいか」 「あはは、止めとけよ いくらファーストネームでも、屋上から飛び降りたらしぬって」 「なーに言ってんだ ファーストネームがそんくらいでしぬわけねえだろ?」 「君達は私を一体なんだと思ってるんだ…」 転校生のように、物珍しいものは、恰好の話題のえじきであった。 私と綱吉は、仕事上で身に付けた愛想笑いと、作り笑いで難なく乗り切ったのだが。 流石に、午前中だけでもう、くたくたである。 なんだ、若いって怖いな。 体力的には、仕事よりは断然マシなのだが なんて言うんだろう、精神的にやられる感じである。 「なあファーストネーム!」 「ん?」 「部活何入るか、もう決めたか?」 「いや、特には…」 有人と共に、いつも通りに屋上へと足を踏み入れると、いつも通りに集まっていたサッカー部メンバーは、私の姿と、隣に立っていた綱吉に首を傾げた。 今日から私と一緒に通う仲間だと説明すると、真っ先に食い付いて来た円堂青年はいつだったか、私に掛けた言葉を再び掛けてきた。 そう、 「じゃあ、 サッカーやろうぜ!」 と。 実は、有人について部活を見ていた時から思っていたのだが、円堂青年の「サッカーやろうぜ」には、何か不思議な力があるらしかった。 その呪文のような言葉を聞くと、皆が笑顔になり、夢中でサッカーをやり始めるのだ。 初めはマインドコントロールとか、幻術でも使っているのかと、疑いにかかったこともあったが私たちとは違って、彼は普通の青年であって。 まあ、必殺技とか言って炎やら氷やら、何かを出してサッカーをしている彼らを“普通”と呼べるかは、定かではないが。 確かに、生徒として動いている今、所属しない部活内をうろついていたら、不審に思われる。 その分、有人と同じサッカー部なら、有人の監視も出来るし、周りの目も、安心だ。 「そうだな、考えておこうか」 「本当か?!」 それより、こんな無垢な円堂青年が私と同い年なんて。 そんな馬鹿な。 |