45 私もトレイズの後へ続いて、ハッチからアーチの上へ飛び出した。 すると、外は異様な程歪んだ空間が広がっていた。 私は平行感覚を失わないように、一度目を瞑り、耳を澄ませた。 「まあ、惑わされないようにするのが一番いい手だと思うけどさあ ここはボクの世界だからね?」 「だからだ、馬鹿野郎」 お前の幻術はめんどくさいからな―――――と、付け足すように言う暇はなく 目を開けると、炎に包まれたナイフが、真っ直ぐに飛んできていた。 右、右、前、左、後ろ、左、右、後ろ、後ろ、前、右、ひだ…り? いや、違う。 最後のナイフだけ、私を貫通するように通り過ぎて行った。 「これは幻覚、他は有幻覚、だな」 「ファーストネームさんの戦い方、真似してみたんだ あは、びっくりしたあ?」 「私の場合は弾丸だ」 「うん、そうだけどね そんな真顔で否定しなくたって…スマーイルスマーイルー〜」 両手で弾丸を放ちながら、気でコントロールし、作り出した幻覚の弾丸を中に混ぜ、放つ。 骸さんから教わった、単純且つかなり上手な、私に合うようにアレンジした技だ。 わざわざ、人の真似をしてくるとは 「本物、見せてやろうか?―――――クソガキ」 「そうこなくっちゃね!」 世の中に完璧な人間は居ないと、師匠が言ったように トレイズの場合、幻術は高度だが、持続性が無いため、幻覚の所々に穴が開いている。 そこに太もものベルトから取り出したナイフを突き刺すと、ミシリと音をたて ドーム型に作られた幻術が壊れていった。 さあ、何処だ。 ―――――鬼ごっこは終わり、だぜ? 辺りをぐるりと一周見渡すと、また同じ世界が広がっていた。 くそ、やられた。 |