43 ナイフにあたる風によって、微かに聞こえる音で ナイフとの距離感を掴み、避けていく。 段々と暗闇にも慣れてきて、視界がはっきりとしていく。 くそ、ヤツは何処だ。 シャッターが全て閉まり、閑散とした商店街に、ナイフが風を切る音と、私の靴が地面を蹴る音だけが響く。 あまり音を立てると、自分の場所がばれてしまうから、出来るだけ慎重に軽くステップを踏むように移動する。 ナイフは一直線にしか進まないため、飛んできた角度から考えると、ヤツは―――――上の方にいるようだ。 まずいな、敵が上にいるということは、圧倒的に不利な状態にある。 何故なら、敵―――――つまり私の位置を確認しやすいということ。 さらに大事なことは、重力によって上から落ちたものは下に落ちるにあたってスピードがはやくなることから、 相手の攻撃力が上がるということだ。 場所は商店街、ならば上には鉄筋で組まれたアーチがのっているはずだ。 つまり、ヤツはアーチの上を飛ぶように移動しながら、私を狙っているようだ。 「ねえ、ファーストネームさん」 「なんだ?」 「うん?その様子だと、まだ本気は出してないみたいだねえ さっすが―――――ぐっ」 「ぐっじょーぶ★てか」 「もーう、ボクのセリフ取らないでよお」 にひひっと笑う声が聞こえた。 私は足を止め、ベストの中身を指で探りながら確認した。 |