39 突如、ウイルスに冒され始めたパソコンが、大袈裟な程音をたてる。 目まぐるしい程、無数の数字と記号がディスプレイ上を駆け巡る。 これ、ほんとにやばくないか。 私が冷や汗で背筋が凍りそうになったとき、有人が動く気配がした。 気配は、近寄ってきている。 コンコン、――――― 「おい、ファーストネーム」 「どうかしたか、有人」 「お前の方こそ」 イエスと答える間もなく開いた扉の先で、リュカが警戒心丸出しで身を乗り出してきた。 こら、パソコンに吠えるんじゃない。 にしてもリュカは…この音を聞き取ったのか? 有人の部屋の隣だとしても、この豪邸の壁は厚い。 耳よくなったな、リュカ。 「リュカの様子がおかしかったんでな ………これは、ウイルス…か?」 「な、分かるのか?」 私を退かすようにしっしっと手で軽くあしらった有人は、 パソコンの前の椅子に腰掛け、早くも着替えた私服姿で足を組んだ。 「父さんが、機械系ががまったく扱えなくてな この手のものは、幼い頃からいじくっている」 「ほう………」 カタカタと有人の指からキーボードを伝わって、ディスプレイ上に広がっていた記号が消えていく。 す、すげえ。 この御曹司、ただもんじゃないね。 頼もしいもんだな。 嗚呼、天才だから余計、護衛―――――私が頑張らなくちゃいけないのか。 |