37 弱きになりつつある自分の気持ちに、苛立つ。 幻覚というのは、よほどの腕前でないと使いこなせない。 私でさえ、匣兵器や何か道具を使わないと、出すことは難しいのだ。 そんな、普通の人間だとは思えないほどの気を出すあいつは。 ―――――一体、何者なんだろうか。 「ファーストネームさーん、」 「…どうかしたか、春奈」 「暇してるなら手伝ってくださいよー〜」 「…暇なわけではないんだがな」 ここ数日、有人と少しは打ち解けたと同時に、他の人とも親しくなった。 特にこの春奈は、有人の教室にまで出没する。 気に入られた、のだろうか。 まあ、悪い気はしないのだけど。 「さっきからケータイいじってばっかりじゃないですか」 「仕事中だ」 「仕事、ですか…? そ、そういえば、ファーストネームさんって…」 ―――――ファーストネームさんって、一体何歳なんですか? 「私か?」 「はい!」 私は何故か、春奈にキラキラとした視線を向けられた。 何歳ってことは、年齢のことだよな。 別に隠すような事でもないので、私は応えようと口を開いた時。 「音無さーん!」 「はい!なんですか木野先輩」 「もうすぐ休憩だから、こっち手伝ってくれる?」 「あ、はい!分かりました!」 私はベンチに座って片手は膝の上のパソコン、もう片手でビデオカメラを操作している 春奈の隣に立って、監視をしていた。 私に質問をしようとした春奈は秋に呼ばれ、ボトルと冷やしたタオルを持った秋を手伝いに行った。 去り際に、また後で教えてくださいねと言った春奈は、グラウンドを忙しそうに駆け回っていく。 日本の高校生、っていうのは―――――大変なんだな。 私はそう、他人事のように感心していた。 |