35 夜中に任務をこなし、漸く眠りについた頃、携帯電話が鳴る。 着信音から、幹部の誰かだろうと測定出来た。 仕事のことなら、無線とか、確実な方を選ぶはず。 ならば私事だろう。 俺に電話してくるヤツなんて、ツナかあいつだよな。 「んー、…誰だ?」 真っ暗な部屋に映し出された、明るいディスプレイ―――――ファーストネーム、の表示に素早く通話ボタンを押した。 『仕事中、ですか』 「もう終わったぜ?」 『じゃあ寝てたんじゃ』 「んー? へーきだって」 同い年のはずなのに、未だに気を遣ってくるファーストネームに、思わず笑みが零れる。 そういえば、最近見ないな。 「そーいやあ、ファーストネーム何処にいんの?」 『ジャッポーネです』 「長期任務?」 『はい、護衛をしてます』 あー、なるほど。 俺はベッドから起き上がり、体を伸ばす。 寝呆けていてまだ完全に覚醒しない頭を振り、また電話に向かう。 「で、どうしたんだ」 『………分かりますか』 ―――――ファーストネームが電話してくるときは、大抵何か息詰まってるときだもんな。 『大分まずい事態になってるんですけど、ボスには報告出来なさそうで』 「…過去のことか?」 『はい、知ってました マスターなのか、私なのか 相手の目的が、分からないんです』 ―――――そりゃあ、大変だな。 俺は力を入れて全身の筋肉を覚醒させ、異国で悩むアイツを想った。 そりゃあ仲間を、想って当然だろ? |