34 「…ッ、」 今まで、こんなことは無かった。 焦りにも似た感情が、私の胸にへばりついている。 なんなんだ、私は何に怯えている。 敵の情報が少なすぎるからか。 それでも、自慢じゃないが私には人並み以上に培ってきた実力がある。 そう簡単に、くたばってたまるか。 それでは、なんだ。 私をここまで追い詰めるのは。 「鬼道、おはよ!」 「円堂か」 「早く出ろ有人」 「ファーストネームもおはよ!」 「ああ、今日も元気だな、円堂青年」 有人を下ろし、運転手に礼をいい玄関へ向かう。 既に待っていたのか、円堂青年が爽やかに迎えてくれた。 なんとなくだけど、その姿を見たら元気が出てきたような気がする。 不思議な人だな、円堂青年は。 その姿を見てぼんやりと脳裏に浮かんだのは、ボンゴレが誇るあの黒髪の剣士。 嗚呼、思い出したら恋しくなってきた。 「武さんなら、どうにかしてくれるか、な」 「どうかしたか、ファーストネーム」 有人に何でもないと答えると、私は徐に携帯電話を取り出した。 |