31 足早に自室を出る。 何をしている、主人に何かあったらどうするんだ。 普段の自分だと信じられないくらい、動揺していた。 そんなとき、私の五感と身体が何かを捕らえた。 数は一人、わざと力(オーラ)を出していることからすると、こちらに何か用でもあるのか。 鬼道家へ、有人へではなく、おそらく私へ。 挑戦か、何となく感じたことのある気配。 まさか…! 瞬時に廊下の窓の外へ、視線を移す。 ――そこには藍色(ヤツ)がいた。 どうやって侵入したのか。 いや、あれは幻覚か。 より強く、幻覚を作り支える、霧の炎が幻覚の周りに見える。 しかし幻覚といえど、敵は敵。 殺気をこめて睨み続けていれば、ヤツの幻覚はにやりと気味悪く笑い、途端に立ちこめた煙が幻覚を隠すかのように現われ 煙が消えたと同時に、幻覚は消えていた。 「! 有人ッ」 敵を見失った、有人が危ないかもしれない。 走りだそうとしたとき 微かに聞こえた風を切る音に、反射で体は動き 咄嗟に手を伸ばせば、飛んできたのは一枚のカード。 ―――明後日の夜。 漆黒の闇の王が、赤く染まった舞台で滅びる。 それは、まさしく宣戦布告。 招いてもいない客は早すぎた。 |