11 犬は主人が出ていってから部屋を見渡し、特に動こうとはしなかった。 暫し時間が経つと、床に座り込み大きな耳をぴんと立てたまま、じっとしていた。 そう、躾けられているのだろうか。 あの護衛係は、犬が出てきた箱を扉近くの棚に置いていった。 窓際の勉強机に向かいながらも、気になって犬と箱、交互に視線を送った。 初対面から変なヤツだとは思っていた。 まだまだ分からないことだらけじゃないか。 柄にもなく気になる。 「あー、…もう」 気になって勉強どころじゃない。 まぁ、復習なんているほど難しくはない授業だし。 予習は夕方のうちに終わっている。 ただ、鬼道家の人間として。 恥ならぬように、義務として励んでいるだけだ。 拾ってくれた父さんに、ほんの感謝の程度だ。 一人考え込んでいると ―――――シュッ、…― 小さく音をたてて。 犬は箱に戻った。 なんなんだ、一体。 |