9 むーだかうーだか、ぶつぶつ言いながら、自称護衛係は夕食を食べている。 父さんは、俺が高校にあがると同時に護衛係をつけるようになった。 世界を股にかける鬼道財閥の次期当主だからなのか、中学のときから変な視線を感じてはいた。 事実、中三のときに誘拐されかけたこともある。 まぁ、部活帰りでボールを持っていたからよかったが。 女ではない、そんなに弱くはない、正直護られるのは嫌だった。 でも父さんの命令なら仕方がない。 それに、護る必要があるくらい、俺は頼りないのだろうか。 信頼して任せているのに、今までのは誰一人護ってはくれなかった。 結局俺が倒すか、疵を負うか。 そんな奴等に信頼なんて、出来るはずが無かった。 でも、コイツは。何かが違った。 始めから敵を仕留めた。 悠々と、その外見からは想像できないくらい簡単に。 線の細い身体、氷のように整った顔。 一目で日本人離れしている容姿に、目を奪われた。 柄にもなく。 誰でも目を惹く容姿、というか風貌。 オーラから違うというか、威圧感、人を引き付ける何かを持っていた。 そして本人は勝手に用事だけ喋り、去っていった。 向かっていった茂みから呻き声だとか聞こえたのは、気のせいではないはず。 「…どうした、青年 食べないのか」 無意識に手は止まっていて。 「………いや、なんでも‥ない、…食べる」 青年、か。 そうだ、コイツは一体幾つなんだろう。 年上、だろうか。 それに容姿、男だか女だかも分からない。 本人の作戦のような気も、する。 |