▲ 1−2
杉原「ふう…やっと昼休みか やっぱり時間が長く感じるなあ」
昼休みになった。
転校して初日、初対面に近いクラスメイトに、話し掛ける勇気がない杉原は、自分の席で一人寂しく昼食を広げていた。
そんな時、ふと顔を上げると、前の席の空白が、やけに目についた。
(そういえば、帽子を被ってたあの子は…)
ムードメーカー的存在の、あの女子生徒の姿がない。
それに、その女子生徒の後ろに座っていた、二人も。
金髪で関西弁のキツい女子生徒に、パソコンを使って会話をする男子生徒。
それぞれ特に目立つ容姿をしていて、キャラクターの濃い彼ら三人は仲がいいようで、休み時間はよくしゃべっているのを見かけた。
その姿は本当に楽しそうで、杉原は羨ましげに見ていたのだった。
(ボクも、早く友達がほしいなあ)
杉原は、暫く考えた後、また昼食を広げ始めた。
その時だった。
「キャアアアアアアア!!!!」
耳をつんざくような、女子特有の叫び声。
なんだなんだと、声の聞こえた方を振り向くと、ちょうど金髪の女子生徒が教室へと飛び込んできた。
杉原「アレ?」
「誰かあーー!!! てゆうか転校生ぇーー!!!」
杉原「何で!!?」
自分の方に向かって来ているような気がしていた杉原だったが、その嫌な予感は見事的中した。
え、何なの?!
「悪漢に追われてるの!!!」
杉原「悪漢!!? え!?ちょっと…!絶対ウソですよね!! ここ学校ですよ!!?」
「私を香港へ売りとばそうとしてるの!!」
杉原「聞いてます?!」
教室ではバリバリの関西弁を話していた女子生徒が、標準語をしゃべっている。
しかも、何か訳の分からないことを言っている。
もしかしたら、ボク巻き込まれてる?!
杉原の嫌な予感は、またしても的中する。
[ぐへへへ… もう逃げられないアルよ 小娘ェ〜〜]
キーボードをカタカタと音を立てながらやってきたのは、パソコンを使って会話をする男子生徒だった。
しかも何か、サングラスに変な髭まで生やして…明らかに変な悪漢である。
ここまでされれば、杉原も呆れてくる。
やっぱりボク、巻き込まれてる!
杉原「ちょっと!!! 何の冗談ですかコレ!!! 意味が分かんないんですけど!!」
杉原が耐えきれなくて叫んだ時だった。
金髪の女子生徒の様子が、明らかにおかしい。
「せやから… アタシは今!! こんなんに追われとって!! ごっつ怖い思いしとんねん!!!」
本音のあまり、関西弁に戻ったらしい女子生徒。
ああ、やっぱり演技だったのか。
いや、悪漢より逆ギレしたアンタが怖いよ。
杉原は本気で思った。
[食べちゃうぞぉ〜〜〜]
「何でや!!! そんなアドリブいらんねん!!」
(何か分かんないけど グダグダだなこの小芝居)
杉原が呆れていると、あまりのグダグダさに、演技をしていた二人は相談を始めた。
そして周りのクラスメイトは、慣れているのか、完全に彼らのことをスルーしていた。
はあ、何か意味の分からない人たちに絡まれちゃったなあ。
杉原は既に疲れていた。
『待ちなさいそこの悪漢!! 女の子を追い回すなんて最低よ!!!』
[むむ!! キサマ何奴!!?]
第三者の声に、男子生徒が乗っかった。
また増えたのか、杉原が呆れ顔で振り向くと、そこに居たのは―――帽子が印象的なあの女子生徒だった。
しかし、格好がおかしかった。
なんだあれ、杉原以外にも何人かのクラスメイトが振り返った。
『教えてあげるわ!! わたしは学園のトラブルは何でも解決 困ってる人は誰でも助ける 学園生活しぇ、…支援部、通称スケット団のリーダー ニックネームこと藤崎なまえよ!!』
女子に人気がある戦闘ヒロインもののアニメに出てきそうな、ドレスのような戦闘服に身を包んだあの女子生徒、藤崎なまえ―――ニックネームは、決めポーズをとって杉原を見つめた。
ちょっとどや顔であった。
→ |