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目の前の事態を受け入れられずに、ぽかんと固まってしまったニックネームは、瞬時に我に帰った。
そして話し始めたのだが―――――
『い、いや…その…… わたしだって、ヘタレだし‥ホラー映画見られないくらいヘタレだけど、うんと……!』
ヒメコ「アタシが怖がりなのがおもろいんやろ!! せやったら正直に笑ってくれたほうがこっちからしても楽やわ!」
―――――見事にフォロー出来ていなかった。
『だ、大体何なんだろうね、焼却炉の幽霊って この写真に写ってるの、開盟の制服じゃないし』
[「焼却炉の幽霊」――ウチの学校に伝わる、いわゆる学園の七不思議というヤツだな]
『スイッチ、知ってるの?』
若干無理矢理ではあったが、話題を変えることに成功したニックネームは、ほっと息を吐きながらスイッチの方を向いた。
はあ、何でこうもわたしはコミュニケーション能力がないんだろう。
やっぱり国語力がないからだろうか。
ヒメコ「あかん!ニックネームが卑屈モードに入っとる! …でも…何でや?」
[今回は自己嫌悪のようだぞ 恐らく自分の無神経さとかに…]
ヒメコ「そういうアンタが一番無神経やわ!」
―――――十年前
ある男子生徒が受験ノイローゼの為、校舎から飛び降りた
しかし死にきれなかった彼は、朦朧とした意識のまま、焼却炉に身を投じようと歩いて行った
そして翌朝、焼却炉の前で彼の遺体は発見された
両足は骨折していたらしい
その日以来、焼却炉の前の花壇を両足を揃えてスッと昇る彼の姿が目撃されるようになったのだ
この写真の制服は、当時のウチの学校の制服だ
「話題変えて紛らわそうとすな!」とヒメコの怒りが飛んだが、スイッチは至って真顔で[え?ボク何にも聞こえないなー]と答えた。
普通ならここでわたしも入れてと寂しがりのニックネームが割り込んでくるのだが、今回は何故か静かである。
何だか嫌な予感がして、ヒメコとスイッチはニックネームの方を振り返った。
するとそこには―――――
『学校の‥っか、怪談って、よくあああるヤツだもんね……あはは』
ヒメコ「ニックネーム泣きかけやないか! スイッチお前…!!そんな話気軽にすんなや!! ニックネーム泣かせた罪は重いで?!!」
『な、泣いてないよヒメコ…! まままだ、まだ泣いてないから…!』
[骨折した足からは骨が飛び出ていたらしい]
『っきゃあああ!!』
ヒメコ「もうやめてえええ!!!」
それはもう見事に、泣いてしまったニックネームが出来上がっていた。
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