▲ 3−1
部室で自分の領地化している長机にトランプを広げていたニックネームは、ふと気が付いた。
一人でトランプって、ヒメコでさえ我慢しているのだからこの際ツッコミはしてはいけない。
『あ、今日水曜日じゃん ヒメコ、ゴミ捨て行ってきてよ』
ヒメコ「イヤや」
即答?!
と、驚いたニックネームだったが、記憶を巡らせ考える。
『何で? 今日、当番ヒメコでしょ? 早く行って来て下さい』
ゴミ当番を作って平等にしよう、と三人での話し合いで出たから当番制が出来た。
今日の当番はヒメコだし、ゴミはたまると厄介だ。
主ににおいとかにおいとかにおいとか…。
ニックネームはもしもの今後のことを考えて、顔をしかめた。
ヒメコ「すんません、イヤです」
『えー?! 焼却炉すぐそこでしょ? ゴミ出せるの一日おきなんだからさ!』
冷静に言ってみた言葉に、冷静に返された拒絶の言葉。
ニックネームはしかめっ面をさらにひどくさせた。
ヒメコ「スイッチ、百円やるわ 行って来て」
[分かった]
『行くのか!! 安いなスイッチ!!』
スイッチもスイッチで、素直に立ち上がってヒメコの方に片手を出している。
ニックネームはたまらずその間に入った。
さっきから一度も雑誌から顔を上げていないヒメコも気になる。
『ルール守らないなんて、らしくないよ? いいからヒメコが行って来なよ』
宥めるように、優しい声で訴えたニックネームに、ヒメコは雑誌に顔を向けたまま何かを答えた。
ちょ、小さすぎて聞こえないって。
なに、と聞き返したニックネームに、顔を上げたヒメコが―――――
ヒメコ「絶対イヤや」
今にも泣きそうな、いや泣いている顔で答えた。
声は完全に震えている。
え、なんかわたしが泣かせたみたいなんだけど!
ニックネームはスイッチに助けを求めるように視線を送ったが、何故かスルーされた。
どどどどうしよう。
自分が何をしたかも分からない。
え、当番守ろうとするのってそんなに悪いこと?!
パニックでニックネームまでも泣きそうになっていたニックネームを見て、これはいろいろと見てられないとヒメコが何かを差し出した。
『焼却炉の幽霊!?』
ヒメコ「知らんのかい!! 今ごっつ話題になっとんねんで ほれ見てみい、学校新聞一面トップやで」
《学園タイムズ》
―――――焼却炉の幽霊現る!!
ついに写真を入手……
『え!? 宙に浮いてるよこの人!! 心霊写真ってこと…?』
記事を一通り読もうとしたニックネームだったが、その前に一面を飾っている写真が目についてよく見てみた。
うわあ、わたし本物の心霊写真初めて見た! という感じのテンションで言ってみただけなのに、どうもヒメコの様子が おかしい。
ま、まさか…
『ねえ、…ヒメコ まさか幽霊が怖くて焼却炉通れないってこと…?』
あからさまにニックネームから顔を反らしたヒメコに、ニックネームはそのまさかが当たっていたのだと確信した。
…まさか。
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