人助け | ナノ

▲ 2−6





『…早かったね、スイッチ』

[言われたものも、ちゃんと持って来たぞ
なんとなくニックネームが考えていることは分かる気がするが、一応聞いておこうか☆]

『オッケー』



屋上で、業務用なのか普段は見ることのない大きなワイヤーを設置していたスイッチに声を掛けたニックネームは、走ってきたことで息切れをしていて。

その隣に駆け寄った涼風は、大丈夫かー?と背中を擦っていた。

その様子を見て、少なからず苛々しだしたスイッチに、中馬は若いっていいねーと呑気に考えていた。

その真相は、ニックネームには分からないだろうが。



ニックネームの呼吸が落ち着いてきた頃、真剣な眼差しで皆を見渡し、口を開いた。



『まず、』



作戦、開始の合図がうたれた。















ヒメコ「さあ来い、エロ猿」



―――――ヒメコが校舎の近くでイエティを誘き寄せる。



手段は何でもいいが、相手は人よりも格段に上の運動神経を持つイエティ。

単に力で行っても無理であるから、イエティの弱点とも言える―――――色気仕掛け作戦が、一番効果的だとニックネームは考えた。

そこでかりだされたのはもちろんヒメコ。

制服のシャツとスカートを少しずらして、ポーズをさせられているヒメコだったが、後ろに隠された手には捕獲用の網を持っている。

念には念を、である。



ヒメコの誘惑までは上手く引っ掛かったイエティだったが



(気づいたか)



ヒメコ「まあええ、こんなモンで捕まえられる思てへん」



野生の勘なのか、危険を感じて警戒していた。

あと一歩までは、踏み切ろうとしなかった。



涼風「おーい、このゴムマジで大丈夫か?」

[オレの計算に間違いはない]

涼風「ふーん、ならおっけー!」

『(納得はやっ!!)
スイッチ、位置は?』

[よし、計算通りだ
そのまま…]



その頃、屋上ではスイッチの用意したワイヤーに涼風が―――――彼は、その抜群の運動神経で急遽かりだされたようだ―――――釣られていた。

その瞳には、ちょうど真下にいるイエティの姿がぼんやりと映っていた。



5秒前







ヒメコ「どのみち速さじゃかなわへんねん」











横の動きやったらな



涼風「よし、ピント合ったぜ!」







涼風の身体が、開盟学園の空を飛んだ。