▲ 2−5
[すまないニックネーム、イエティが入って行ったのは隣の女子更衣室だった]
『スイッチの馬鹿!』
望んでもいない展開が起こり、半ばパニック状態なニックネームだったが、用心しながらスイッチの指示通りにイエティを捜し回っていた。
途中でイエティを見つけたと思えば、イエティの脱出を一番バレてはいけないヤバ沢に遭遇してしまった。
はあ、男子更衣室のことからことごとく災難なんですけど。
ヤバ沢「ニックネームもチアリーディングやる? ニックネーム可愛いから、絶対ヤバイわ、うん、ちょーヤバイ!」
『そのヤバイの意味が分かんないし、わたしは可愛くないし! ごめんねヤバ沢さん、ちょっと他の依頼で歩き回ってたから、直ぐにイエティのとこ戻らなきゃ…』
ヤバ沢「あら、そうだったの じゃあ引き止めちゃヤバイわね」
ヤバ沢に手を振られ、チアリーディング部の練習場所を後にするニックネームだったが、内心冷や汗たらたらであった。
危なかった。
ヤバ沢がもし振り返っていたら、イエティの脱走がバレていた。
はあ、と安心なのか、よく分からない溜息を吐きながら、イエティの後を追って走りだしたニックネームだったが、既にイエティの姿は無い。
『………またか』
振出しに戻ってしまった。
今度はマイナスな意味での溜息を吐いていると、ニックネームのケータイが鳴った。
『もしもしヒメコー?』
ヒメコ「す、すまんニックネーム、…と、取り逃してしもうた」
今度はソフト部の練習場所に現れたらしいイエティは、ニックネームよりも近い位置にいたヒメコが向かったらしいのだが、取り逃したようだ。
野性、恐るべし。
スイッチからの連絡も無いし、とりあえずヒメコと合流するため、ニックネームはグラウンドへ足を向けた。
[こちら指令室 次は華道部の部室に入った模様 急行せよ]
ヒメコ「エラッそうに言うなハゲェ!!! お前が行けェ!!」
『あ、いたいたヒメコー!』
グラウンドへ辿り着いたニックネームがヒメコを見付けたと同時に、スイッチからの指示が入った。
もうそんなに移動したのか、イエティどんだけ元気なの。
『華道室か、』
ヒメコ「………あのエテ公、女の居る場所ばっか行きよんな」
息を切らせながらも悪態をつくヒメコの言葉に、ニックネームは何か引っ掛かった。
―――――女?
そういえば最初の指示によれば、イエティは女子更衣室に向かっていた。
あとはチアリーディング部の練習場所、ソフト部のいるグラウンド等。
イエティが向かっているのは全て、女子が居るところだ。
確か、ヤバ沢さんによればイエティは男の子だったはず。
『!……そっか』
イエティは猿。
猿はすばしっこいから、このまま鬼ごっこみたいに追い掛けても捕まえられる訳が無い。
ならば―――――
『オトリ作戦!! こっちからワナを仕掛けるよ!』
ヒメコ「は!?オトリ?誰が!?」
『スイッチ、わたしが今から言うもの持って来て、ダッシュで!』
ヒメコ「なあ!誰が!?」
藤崎なまえ、イイコト思いつきました。
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