▲ 2−1
―――とある日。
スケット団の部室に、一つの依頼と共に、一匹の猿が届けられた。
名前はイエティ。
珍しいシロテテナガザルの雄らしい。
飼い主―――もとい依頼主は、ニックネーム達と同じクラスのヤバ沢萌。
スケット団への依頼が最も多い人で、ニックネーム達からすればいい顧客なのだが―――毎回、厄介な依頼ばかり持ち込んでくる人でもあった。
ヤバ沢の話によると、両親が旅行で家をあけているため、イエティだけを家に置いておくのがヤバイと感じたらしい。
しかし、部活をしている間はどうしても面倒を見ることが出来ない。
だから、スケット団に預かって貰いに来たそうだ。
ヤバ沢「じゃあ後はヨロシクね」
『いやいやいや!!! おかしいよ!?いくらスケット団でも、お猿さんなんて預かれないよ!!』
ヤバ沢「ちょっとぉ だってスケット団でしょ? 困ってる人を助けるんじゃないの?」
『いや、そうだけど…』
看板に偽りあり?とまで言われてしまえば、ニックネームは引き受けるしかなくなってしまった。
気が重い。
人間の子どもの相手ですら得意とは言えないのに。
猿って、猿ってちょっと。
ヤバ沢の言葉を借りれば、ちょーヤバくない?な感じである。
哀愁を漂わせ、下を向いてしまったニックネームの背中には、自信がありませんと書いてある気がした。
しゃーない、ヒメコはイエティを抱き寄せて、ニックネームに話し掛けた。
ヒメコ「これでもアタシ、動物めっちゃ好きやねんで ダテに自然を愛するヒメ姉様、呼ばれてへんわ」
『え?そうなの? 聞いたことないけど…』
ヒメコ「だ、大丈夫、怖くない」
自分にも言い聞かせるように呟いたヒメコ。
でも少し希望の光が、見えたかな。
ヒメコの気遣いに気が付いたニックネームは、頑張ろうと拳を握り締めた。
それを見て、ヒメコも安心したようだったが
―――ムニ、という変な感覚がした。
なんだ、と下を向いてみれば、イエティが満足そうに、ヒメコの胸を触っているのが見えた。
あったまきた。
その後のヒメコの行動には、迷いがなかった。
履いていた上履きで、一発。
スパーンといい音が、部室に響いた。
『ヒ、ヒメ姉様ーー!!!! 依頼人の前で何やってるの!!!』
思わず制止に入るニックネームだが、関係ないとヒメコは言い張るし、ヤバ沢はショックと驚きのあまりに倒れてしまった。
あーあ、なんかいろいろ大変なことになってきた。
ニックネームが頭を抱えたときだった。
―――ガラッ
「ビークワイエット!!!静かにしたまえ!!! ここは動物園か!!?」
英語教師の金城が、騒音ばかり発するスケット団の部室に入り込んで来たのである。
顔には明らかに不機嫌と書いてある。
ああ、また面倒なのが増えた。
ニックネームはさらに頭を抱えた。
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