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  浜野








「みょうじー、帰ろうぜー」



癖なのか、いつも通り腕を頭の後ろに組んで立っている浜野に、なまえは大きく頷いた。

なまえと浜野は、去年同じクラスだったという、実に簡単な間柄である。

浜野は普通の男子と比べたら、なまえの中ではよく話す分類に入る。

彼はいつも人のよさそうな笑みを絶やさない―――事実、優しい人だからなのか、先輩後輩共に人脈が広い。

そんな彼だから、仲良くなるのは必然だったんだろうと、なまえは最近結論付けた。

クラスが変わっても、変わらず浜野とよく話すのは、なまえたちが同じ部活だから、とまた簡単な理由。

家も近くらしいので、ついでに一緒に帰ったりもする。



「あれ、今日は速水くん一緒じゃないんだね」

「速水は塾だってさー
なによー、みょうじ、俺と二人っきりは嫌だってこと?」

「あはは、別にそういう訳じゃないよ」

「ほんとに?」

「ホントホント」



いつも通り、気兼ねなく冗談を交えながら、会話は途切れることなく続く。

なまえは、こんな関係が一番楽でいいと思っていた。

最近友達の間でよく話題にのぼるのは、恋愛話ばかり。

何組の誰と誰が付き合っているだとか、何日前に別れただとか。

なまえは他人のことをとやかく言うのが好きではないし、どちらかというと、自分には縁のない話だからと、あまり会話には入っていっていなかった。



「あ、そうだ
最近速水とよく釣り堀行くんだけどさ、みょうじも今度行く?」

「釣りかあ…
わたしやったことないんだよね」

「あれ?そーなの?
勿体ないな」

「浜野さんってさ、いつもサッカーか釣りの話しかしないよね」

「あれ?そーなの?」

「あはは、」



恋愛対象、対象外、それを何をどこで隔てればいいのか。

人によって価値観は違うとは言うものの、なまえはいまいち理解出来なかった。

浜野のように、仲の良い男友達ならいるし、基本的には嫌いな人はいない。

―――わたしって、変なのかな。

その言葉に、隣を歩いていた浜野の肩が、ぴくりと反応した。

真剣に考えていたなまえは、いつのまにか口に出してしまっていたらしい。



「んー、みょうじは変なんじゃない?」

「え、浜野さんひどいなあ
ストレートすぎるよ」

「みょうじがきいてきたんじゃん?」

「いや、つい口に出ちゃったと言いますか…
気にしないで?」

「えー?
そんな真剣な顔されて、気にしないわけにはいかないでしょーよ」

「………紳士だね、浜野さん」

「いまさら?」



部活後、日は傾きはじめ、ちらほらと街灯にあかりがともる。

通学カバンと、部活用のエナメルバックを両肩にかけた浜野さんは、歩きながら体勢を持ち直す。

なまえは不意にケータイを取り出して、メールを確認した。

以前、返信が遅かったとかで、ねちっこいのが有名な同級生に散々言われたからである。

そんな大事なことなら、直接言えばいいじゃない。

大体、その場のノリとかでアドレスを交換した人に、わざわざ伝える必要のある用件なんて、そうないだろうに。

はあ、なんか疲れる。

なまえの歩くスピードが、少し遅くなった。

それに気がついたのか、浜野が斜め横から、なまえのケータイを覗き込むように、顔を乗り出した。



「女子って、大変だねー」

「…あれ、もしかしてまた口に出てた?」

「いやー?別にー?」



みょうじが分かりやすいだけでしょーよ。



「……浜野さん、ひどいよ」

「ちゅーか、その浜野さんっての、やめねー?」

「え?
なんで?」



いきなりどうしたの。

いや、いきなりじゃあないんだけどね。



なまえの顔を覗き込んだまま、浜野は嬉しそうに笑う。

その様子がよく理解出来ないなまえは、少し浜野から離れた。



「えー?俺はみょうじと結構仲がいいと思ってたんだけどー?」

「……じゃあ、浜野?」

「ブッブー!」



浜野はなまえのことをみょうじ、と呼び捨てにする。

そういえば、最初の頃はさん付けだった。

じゃあ自分も呼び捨てにすればいいのか。

そう考えたなまえだったが、両腕を胸の前でクロスさせた浜野の様子から、どうやら違ったらしい。



「じゃあ、なに?」

「みょうじ、ちゅーか俺の下の名前知ってる?」

「知ってるよ、海士でしょ、浜野海士
海の男って感じするって話したじゃん」

「だーかーらー!」



だから、なんだって言うんだ。

未だ理解出来ずにいるなまえは、首を傾げた。

その様子に痺れを切らしたのか、浜野が何かを決心したように、緊張した顔で口を開いた。



「……なまえ、」

「!
…………か、海士…?」



状況を理解したなまえは、何故か急に顔が熱くなった。

なんで?

疑問に思いながらも、浜野を呼ぶ。

すると、浜野は満面の笑みを浮かべた。

本当に嬉しそうだ。



「そーそー!」



なんでだ、なんで?

なんで顔が熱くなるの。

恥ずかしい?

そんなわけない。

毎日友達にだって、名前で呼ばれてるじゃない。

なまえは、わけが分からずに下を向いた。



「よかったよかった
浜野さんって、なんか距離置かれてる気がしてたんだよねー」



なまえの気も知らず、浜野はまた呑気に歩きだした。

鼻歌まで歌っているようだった。

なんだ、なんなんだ。



「なまえ!」

「な、なに…?」

「じゃあ来週あたり、行きますか!」










釣り堀デートに!




(わ、わたしまだ行くって一言も…!)
(えー?あんな楽しいもの知らないなんて損だって)

冗談が冗談に聞こえなくなったわたしは、なんなんだ。
病気なのかな。

答えまでもう少し……










イナGO!第一号は浜野海士!
浜ちゃんすっきゃねん!!

口調がまだあんまり掴めてないなあ
エセです(;´∀`)

11_09_09


前サイトより持ってきました
 七瀬 12_04_05




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