メイン | ナノ



  Text






  ライオンは吠えない








「影山輝くん、ね!分かった!」
俺が緊張しまくってやっと自己紹介をしたときに、ちゃんと覚えたよと、人の良さそうな笑顔で話し掛けてくれたことが印象的だった。
その人の名前はみょうじなまえ先輩。
歳は一つ上で、サッカー部のマネージャーをしている人だ。
空野さんや山菜先輩、瀬戸先輩とは違って、一年生の頃からマネージャーをしているらしくて、先輩達とは一番仲が良かった。
俺はずーっとサッカーが好きで、でもいろんなことがあって。
ようやく入部に踏み切るまでに至ったのに、フィフスセクターとかいうサッカーの勝敗とか色んなことを管理している組織があるとか何とかで、雷門が反乱を起こすことになったらしい。
凄い大事になってきたなあ。
部に馴染めるかだって、凄く不安なのに。
そんなときに、円堂監督がかけてくれた力強い言葉よりも、みょうじ先輩に「大丈夫だよ」と、またあの優しい笑顔を向けてもらえたことの方が―――――何だか凄く、安心した。
何でだろう。





「凄いね、影山くん!」
「そんなことないですよ…!」
「ううん、凄いよ!
みんな素直じゃないから口には出さないけどね、凄いって褒めてたよ!」
「ほ、本当ですか…?!」
休憩の時に、スクイズとタオルを持ってきてくれたみょうじ先輩。
実際にプレーしている俺よりも嬉しそうな顔で、そう教えてくれたみょうじ先輩。
ああ、嬉しいなあ。
サッカー始めてまだ3ヶ月だけど、なんかもうサッカー大好きだ!
先輩達から褒められただけで浮かれすぎだと思うけど、何か凄く嬉しいんだ。
「うきーーっ!」
「か、影山くん?大丈夫?」
「あ、え、えっと…大丈夫です!」
思わず叫んじゃったら、みょうじ先輩に見られていた。
うわあ、恥ずかしい。
でも、先輩達に褒められたのもそうだけど、みょうじ先輩に褒めて貰えた方が嬉しかった気がする。
あれ、なんかおかしいな。





「あ、影山くん」
「みょうじ先輩!こ、こんにちは!」
「こんにちはー
校舎で会うの、初めてだね」
今日は制服姿のみょうじ先輩に会った。
休み時間なのに、沢山のノートを持っていた。
係り、とかかな。
「提出物ですか?」
「うん」
「は、半分持ちますよ」
「え?いいよいいよ、大丈夫!」
笑って答えてくれた先輩だけど、身体は正直みたいで、結構ふらついている。
あ、あぶない。
「俺は大丈夫ですよ、みょうじ先輩こそ大丈夫じゃないですよね?」
「あ、」
「職員室でいいですか?」
「…ありがとう」
若干無理矢理、ノートの山を奪い取ると、みょうじ先輩はまた笑ってくれた。
なんか、どきどきするなあ。
話を聞くと、先輩が係りなわけではなくて、今日係りが休んでしまったから代わりにやっているのだそうだ。
ホントにこの人、お人よしだなあ。
「おーい影山ー!
もうチャイムなるぞー!」
「ええ−−?
あ、ホントだ!」
後ろからポンと肩を叩かれ振り向くと、クラスメイトがそう言って俺の隣を走り抜けていった。
あ、まずい。
「みょうじ先輩、急ぎましょう!」
「本当にごめんね、影山くん!」
結果的には滑り込みで授業には間に合って、部活では「いい後輩を持った」といわれた。
あれ、何か嬉しくない。





「それって恋だよ!」
「え?」
最近みょうじ先輩を見てるとすごくどきどきして、先輩のことを考えるとすごく嬉しくなる。
なんか変な感じだなあと思っていたら、空野さんにそう言われた。
え、俺が…みょうじ先輩に、恋?
よく分かんないと答えると、空野さんは更に力んで言う。
「恋はするものじゃなくて、落ちるものだよ!」
「落ちる…?」
「気が付いたときには、もう既にその人のこと好きになっちゃってるってこと!」
「そ、そうなんだ…」
でもやっぱり分かんない、と首を傾げていると
「じゃあ、これからみょうじ先輩と話したり、一緒にしたこと、自分じゃなくて違う誰かとしてたらどう思うか、考えてみたら?」
そう言われて、考えてみることにした。





スクイズを手渡しで…もらえない。
校舎で会っても…話しかけてもらえない。
すごいって…言ってもらえない。
笑って…くれない。
「嫌だー!」
空野さんに言われてから一週間くらい、考えてみたけど、それは全部嫌だった。
そう報告すると、それはやっぱり恋だと言われた。
「じゃあ、他の人に取られちゃう前にいってこれば?」
「…何処に?」
「もう!“行く"じゃなくて“言う"!
はやくすきだっていってきなさい!」
空野さんに背中を押されて、俺は走った。




「みょうじ先輩!すきです!」





ライオンは吠えない




「来年、受験で忙しくなる前に言っておいたほうがいいと思って!」
「!
よ、余計に受験どころじゃなくなっちゃうでしょ!
影山くんのばか!言うのはやすぎ!」
「(ばか?!)
え、でも…」
「わたし、受験終わってからどうしても諦めれなかったら言うつもりだったのに!」
「あ、やっぱりそれって…」

すきだばかやろー!










キーワードは「あれ、なんか…」
輝は年下ポジションが一番いいよね!
くそ、でもこれだれだよ!!エセ輝じゃん!

日記風に書いてみようとか考えてたんだけど、よくわかんなくて挫折。

無事に間に合って、全部掛けてよかった!!


受験生応援企画第二弾、12/04/01までフリーです!


お題:ポピーを抱いてより


七瀬 12_03_30




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -