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  土屋康太






※バカとテストと召喚獣です。
第一弾のムッツリーニ視点です。



自分で、女子から好かれていないことは自覚していた。
隠しているつもりだけど、内に秘めた想像とか願望はバレていたりするようだ。
それでも辞める気はないし、反省も…とりあえずはしていない。

そんな自分の考え方が、最近少しずつ変わってきたのは、多分俺以外にはバレていないと思っている。

「…………みょうじ?」
「あ、ごめんね」

みょうじなまえという、同じ学年の女子から、視線が突き刺さっているように初めて感じたのは半年ほど前だった。
同じクラスでもないし、知り合いでもない。
そんな関係性の人間に、わざわざ話しかけて理由を聞くほどのコミュ力が無いのは自覚済み。
それならば、調べてみればいい。
そう結論づけて、独自の情報網やらを駆使して得た情報のうちに、理由として妥当なものが一つ見つかった。
すごく不本意であるが、

「…………どういうつもりだ」
「うーん……猫とかペットを愛でる感覚?」
「…………嬉しくない」
「いやいやいや、そんな赤い顔して言われても」

かわいいかったから、なんて口に出されると思っていた。
言葉にはしなかったが、みょうじはそれを思っていて、堪えているのだろう、少し困った顔をしていた。
周りの男子と比べると自分が小柄で、かわいいと言われたこともあるのだからそういう顔立ちなのは嫌でも自覚していた。
だから、みょうじがかわいい物好きだという情報から、自分がその対象に入っているのだろうということは予測出来ていた。

それでも、実際に近くで話せたことに、俺は内心舞い上がっているようだった。

本当は、Fクラスのいつものメンバーとの昼食で、じゃんけんで負けた人が飲み物を買ってくるという定番の賭けをして、今日自分が負けてここにいるだけだった。
注文の品をわざと間違えてやろうかと思ったが、少し考えてやめた。
俺は今、いいことを思い出して気分がいい。
それは―――――今日、みょうじは弁当を持ってきていない日のはずだから、きっと飲み物も買いにいくはずだったからだ。
弁当の日は水筒も持参しているが、購買の日はペットボトルの紅茶を買うことは調査済みだ。
そしていつも買う紅茶は、旧校舎の自販機にしか売っていないため、みょうじはわざわざ旧校舎までやってくることも分かっていた。

もしかして、会えるのではないかと。
少し、期待していた。

「…………こっちの自販機には、普段から人が来ないから、驚いただけだ」
「あー、そうなの…?
でも、ちょっと無理あると思うよ、それ」

ふふ、と笑うみょうじに少し動揺して、買ったばかりのペットボトル達が音を鳴らす。
やっぱりダメだ、こんな近距離は思考が上手く回らないし、鼻が熱くなる。

「わたしは普段から、こっちの紅茶の方がすきだから、こっちに来てるだけなんだけどな」
「…………知ってる」
「うん?そうなんだ…?」

思わず出てしまった言葉に、少しみょうじの眉が下がるのが見えた。
まずい、つい出てしまった。
これではストーカーしてると思われても仕方が無いし、勝手に調べられていると気持ち悪がられるかもしれない。

「えーっと、ごめんね
なんか嫌な思いさせちゃって」

思わず下を向いてしまっていると、何を勘違いしたのかみょうじが謝ってきた。
嫌な思い、って、もしかして最初のやつか。
それは理由はどうであれ、俺からすれはいいことで……ダメだ、思い出しただけで鼻が熱くなる。
たえろ、たえるんだ俺。
ここで鼻血は勘弁したい。
そんな葛藤をしていたら気をつかったのか、じゃあね、と去ろうとするみょうじ―――――自然と手が伸びた。
掴んだのは手ではなくて、ブレザーの袖だったけど、目的は達成した。

「…………せっかく会えたのに、今度は実際に会話から情報収集しようとは思わないのか」
「あら、そんなことまで知られてたんだ」
「…………気配とか、視線とかには鋭い方」
「そっか、じゃあ今度から気をつけるね」
「…………だから、なんで今じゃないんだ」

話すことを達成し、もう少しと欲張りになっていたのかもしれない。
珍しくすらすらと言葉が出てきた。
言葉数が少なくて、誤解されることもよくある。
でもみょうじなら分かっているはずだ、と、勝手に思って、そう口に出してみる。
すると、普段から必ず人の目を見て話すみょうじが、珍しく下を向いたままそう紡いだ。

「名前呼んでもらえた幸せで、あんまり頭が動いてないからかな」

飲み物じゃんけんの注文は、既に品揃えの多い新校舎の自販機の方で済んでいた。
後は自分の分のみで、みょうじの好きな紅茶を飲んで見たことがないことを思い出して、会えたらいいと少しの期待を込めて買ってみただけだった。
それにみょうじは、飲み物を買いに旧校舎まで来たはずだ、それなのに帰ろうとしている。
顔が赤いのは俺のせいだろうか。
それならば、もう一つ、俺で頭がうまるように。
これを見て思い出すようにと、みょうじの好きな紅茶を握らせれば、みょうじは一度だけ俺の方を振り返って、走り出した。

視線を注がれていることで、思い上がっている自覚はあった。
それでも煽ってきたのはみょうじだ。















ドローイングワールド










ムッツリーニ視点はこちら。
でもこっちも書き上げたら、ムッツリーニが鼻血出さないってどうなの…と。
ダメだ!これは!深く考えなくていい企画なんだ!!
もしかして:現実逃避
スランプふざけんな、第二弾です。

お題:カカリアさま


15_01_15




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