メイン | ナノ



  Text






  山本





※携帯電話パロ



ちょっと目を離しただけだった。
でも、あの子が居なくなるには十分な時間だった。



「『武』ー!
どこにいるのー!?」

なまえは、一旦足を止め肩で息をした。
冷静になれ、と自分に言い聞かせながら深呼吸を繰り返すも、先程から冷や汗が止まらない。
早く、早く見つけないと。
わたしと違って、あの子は…。

ビニール傘を握る右手が汗ばむ。
先程から降る雨が、なまえの行く手を阻むようで、焦りだけが募っていった。

「なんで、よりによって雨の日にいなくなるのよ…!」

『武』
なまえが先程から幾度となく呼んでいるその名前は、なまえの携帯電話の名前である。
折り畳める時代から、画面を触って動かす時代へ。
さらに今では直接触ったり、己で考えて行動までしてしまう時代。
なまえはいつもは便利だと感謝している機能だったが、今では迷惑のなにものでもない。
あの子、いつもはわたしの言うことを聞くし、側を離れないいい子なのに。
どうして今日に限って。

なまえが武の存在を見失ったことに気がついたのは、学校から帰宅してからである。
運動故に遅くまで部活をしていて、へとへとになって帰って来たからか、気がつかなかったのである。
なまえも武もおしゃべりが好きで、いつもは会話が弾みすぎるくらいなのに、静かであったことにどうして違和感を感じなかったのか。
全ては雨のせいだと責任を転嫁してみるが、状況は何も変わらない。

「今日は寄り道してないはずだし…
やっぱり駅かなあ…」

携帯電話と言うのに携帯しないでどうする。
ましてやその携帯電話に意思があるような時代なのだから、無くしてしまったら無くした場所に居続けているのかさえ分からない。
何でこうなっちゃうんだろう。
従来の機種よりはかなり値がはったというだけで、親にグチグチ言われているのに。
無くしたなんて言ったら…怒られるどころじゃすまないかもしれない。
はあ、どうしよう。

「とりあえず、通った道を全部戻ってみるしかないよね…」

靴が水溜まりを踏んでも、かかった水滴で服が重くなっても、なまえは脚を休めなかった。
わたしは風邪をひいたってすぐ治るけど、武は修理に時間がかかる。
早く、見つけてあげないと。

諦めようと思ったのが、ちょうど8回目。
なまえは辿ってきた道ではない方向へ、ふと視線をやったときだった。

「武…?」

駅前の公園に、見慣れた人影があった。
どうしてだとか考えるよりも先に、なまえは駆け寄り傘をかざした。

「…ん?
あれ、雨…」
「何やってんのよバカ武!!」
「お!なまえじゃねえか
こんなとこで何やってんだ?」
「それはこっちのセリフ!!」

本当に不思議そうな顔をされた。
ああ、この子はこういう子だったわ。

「風邪ひいちまうぞ?」
「わたしはいいの!
武こそ、勝手に出歩いたりして!何してたのよ!」
「はは、わりぃわりぃ」

いつも通りの屈託の無い笑顔を向けられてしまえば、責める言葉は自然と引っ込んでしまう。
ああ、これだから武は…。

「なまえにバレない内に見つけたかったんだけどなー
…心配かけちゃったみたいだな」
「…何か探してるの?」
「ちょっと、な」

わたしがさしている傘の中から出ていこうとする武の腕を掴むと、武は困ったように笑ってわたしの手を離そうとする。
なんか今日、自棄に頑固だなあ。

「探してもらったとこ悪いけど、先帰っててほしいのな」
「…そんなこと、出来るわけないでしょ!?」
「頼むからさ」
「だって、武はわたしと違って、壊れちゃったら大変なのに」

―――――なまえが俺を大切にしてくれるくらい、俺もなまえが大切なのな。

「…、なら、わたしも一緒に探すから…何探してるか教えてよ」
「………絶対笑わねぇ?」
「う、うん…?」















確か彼は忠犬タイプ





(……なまえとお揃いのリストバンドなんだけどな、気がついたら落としちゃってたのな)
(そんなのまたいくらでも買ってあげるのに…)
(いやだ!俺はあれがいいのな!なまえとお揃いなもの、あれが初めてだったんだからな!)
(おお…(めっちゃなつかれてるわ、わたし))










ボンゴレコーポレーション製
シリーズX・山本武モデル
内蔵アプリ
・感情(忠犬タイプ)
・スポーツ(野球)
キャッチコピー
いつまでも少年の心を持つ、運動神経抜群の爽やかな天然記念物。

拍手連載にまでこぎつけられなかった携帯パロの残骸です(笑)
継ぎ足し継ぎ足しで作ったのですごくテキトーだなあ…
詳しくはネタ帳でどうぞ!


13_02_03




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -