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  椿








「はあっ!?
椿となまえがデートぉお?!!」



とある日のスケット団の部室。

いつも通り思い思いに好きなことをしていた3人だったが、それはヒメコの何気ない話が発端で一気に騒がしくなる。



「シーッ!
アンタ、声が大きいねん!!静かにせい!
もし誰かに聞かれとったらどないすんねん!!」
[全くだ、デリカシーというものがないな]
「う、うるせえっ!!
これは―――――」



―――――緊急事態なんだ!!















『ご、ごめんね…!
待った…?』
『いや、僕もさっき来たところだ』



尾行と言えば聞こえがいいかもしれないが、現在スケット団の3人が行っているのは、



「ちゃんと約束の時間より早くくるなんてちゃっかりしてんなあ椿ぃー
初々しくて、なんやこっちが照れるわあ」
[確実にストーカーだな]
「しっ!
スイッチ声でけぇよ…!」
[す、すまない]



椿佐介とみょうじなまえのデートを、勝手に覗いていた。

ふんわりとした女の子らしいワンピースに、真面目な性格の椿に気を遣ったのだろうか、控えめに施してあるメイクに、なまえの浮かれ具合が分かった。

愛されてんなあ、椿ぃー!



「なまえかわいいわあ…なんやあれ、椿の為なんて勿体無い!」
「お前、応援してんのか邪魔してんのかどっちだよ…」



どちらも照れているのか、頬を赤くしたり、俯いたり。

初々しい光景に、自分たちも恥ずかしくなってきたスケット団。

早く進まねえかな。

切実な願いである。



「にしてもよ、何で椿となまえがデートするって、ヒメコが知ってたんだ?」
「ボッスン、アンタアホやな
アタシとなまえは大親友やで?そんくらい知っとるに決まっとるやろ」
「いつから大親友になったんだよ
大体俺が紹介してやんなかったら、今頃ヒメコも椿も知り合いじゃなかったくせによ」



―――――付き合ってることすら教えてくんねえなんて、水臭えじゃんか。



3人の話題に上がっている椿となまえは、開盟学園では有名なカップルである。

最近交際にまで発展したばかりだが、何せ話題性がありすぎるから、噂が噂を呼んで、どんどん膨らんでいるのである。



「結構有名な話やで?
ボッスンなら知っとると思っとったわ」



椿は生徒会副会長である故に、学園で知らないものはいない。

なまえはテニス部のエースで、勉強も成績上位をキープしている。

二人とも、男女問わず人脈が広く、それなりに―――――モテる分類に入っているため、噂が広まるのは早かったのである。



「……どーせ俺なんて、赤ツノチリ毛虫で、…」
「なんで今卑屈モードになんねん!!
ほんまにアンタめんどくさいわあ」


『じゃあ、行こっか』
『ああ』


[おい、二人が動いたぞ]



本人は結果こそは知らなかったものの、なまえと椿の仲を仲介というか―――――キューピッド的なポジションだったのは、両者の知り合いであるボッスンであった。
そういうのに鈍いとよく言われているボッスンだったが、友達が悩んでいると知ったからには、全力でサポートする。

それが今回もいい方に転がったので、今がある。



「にしても、あいつらどこ行くんだろうな?」
[こっちの方向だと、先月リニューアルしたショッピングモールがあるぞ
カップルは勿論、家族をターゲットにしているから、様々なジャンルのショップが揃っていると好評なようだ]
「「さすがスイッチ!」」



話し声がだんだんと大きくなっていることには気が付かないスケット団。



「おーおー、なんやなんやー?
買い物デートかいな」
「何か今日、ヒメコお前めんどくせえぞ」
「なんやて?ボッスンには言われたくないわ…!あ、ちょ、卑屈モードはやめろや」



既に何度か振り返って、不審そうな顔で辺りを見ていた椿には誰も気がついてはいなかった。















二人が店に入れば、変装をしたボッスン、ヒメコがそれぞれ個々にであったり、カップルや兄妹のように振る舞って、ぴたっと―――――ストーキングした。



「あ、また違う店に入りよったで」
「…あれ?
なーんかあの店、…なんだっけ、」



ショッピングモールを回りはじめて、一時間は経った頃だろうか。



[なまえが以前から入りたいと言っていた、今流行のカフェだな]
「そう、それだ!」
「なんや椿、ちゃあんと分かっとるやないか」



椿もなまえも、モテる分類にはあったのだが、何せ鈍感と呼ばれる分類にも入っていた。

だからこそ、興味本意ではあったが、なまえ達が心配であったスケット団。

そんなわけだから、椿の気遣いがよほど嬉しかったのだろうか。

ヒメコは何故かボッスンの肩を叩いた。

もちろん、元ヤンの女番長に加減なんてものはない。

いてっと大声を出してしまったボッスンに―――――



「椿が振り向いたで…!」



慌てて三人は近くの店へ逃げ込んだ。



「あー…ビックリしたー」
「誰のせいやと思っとんねん!!お前はアホか!」
「はあ?!
元はと言えばヒメコがバカみてぇな力で叩いてくっからだろ!!」
[やめないか二人とも
全く話が進まない]



ボッスンのせいや!いいやヒメコのせいだ!

小さなことで言い争っていたのを見兼ねたスイッチは、逃げ込んだ店から出て椿達が入った店を覗いてみた。

な、なんだコレは…!!



[ボッスン、ヒメコ、すまない]
「なんだよスイッチ!今ちょっと黙って、ろ…」
「あたしらは今ここではっきりさせなあか、んねん…!」


「見られている気がしていたが、……やはり貴様らだったか、スケット団!」
「つ、椿…!」
「ぐ、偶然やなあなまえ…!」
「ヒメコ達も遊びにきたの?」
「お、おん、そうや…(そうや、この子鈍感やったわ)」



椿は置いておいて、なまえはなんとか誤魔化せそうだと安心した時だった。

テンパりにテンパったスイッチが―――――



[べ、べつにつけてきたわけじゃないんだからね!]
「「スイッチ!!」」



大きな爆弾を落とした。



「ほう、やはり僕たちのあとをつけてきていたのか…!」
「ち、ちげえよ!
いくらなんでもお前達のラブコメ見てえなデートを見て楽しむなんて、そんなことするわけねえだろ!!」
「……楽しんでたんだね、ボッスン」
「あかんてボッスン!アンタ墓穴掘っとるで!」



もう手遅れだ、と皆が悟った。

そんな時声を上げたのはなまえ。



「…悪気があったわけじゃないんでしょ?
だったらもういいよ……泣かないで、ボッスン」
「な、泣いてねーよ!」



幼子を宥めるように頭を撫でたなまえに、反応したのは彼氏さまで。

それがまた大波乱を生むことになるとは、なまえには分からないのである。

この、純粋っ子が!



「なまえはホンマにやさしいなあ」
「それはいいところなのだが…どうしてこう、なるんだ…」
「ホンマ、悪いなあ椿ぃー」





「デートの邪魔してもうて」










つまさきの魔方陣




(ボッスン、ゲーセン行こー!
とってほしいやつがあるの…!)
(おう!任しとけ!)

(どうして藤崎とばかり…)
(アンタと二人っきりは恥ずかしかったんとちゃうん?
まあ元々あの二人は仲ええから、一緒におるんはしゃーないやろ)
(結局俺たちは何をしに来たんだろうか)










2012夏企画、月詠 碧さまへ。
尾行作戦、失敗でした。
この後5人で遊ぶんでしょう。

書いていて楽しかったです。
でも夢って感じがしないですよね、本当にごめんなさい。
そして特に椿の口調が迷子、ヒメコもエセ関西弁。
遅くなってしまった上に…この出来ですみませんでした(m´・ω・`)m

もう冬ですが、夏企画のリクエストとして貰って頂けると嬉しいです。
今後ともコロナを、七瀬をよろしくお願いします!

七瀬。


お題:alkalismさまより


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