3-1

凄く雑なあらすじ!

私の名前は禪院真知、年齢は六歳。
職業はロリコンメーカー…いや違う、呪術師(情報屋)である。
そんな私がこの度傑さんと任務に行ったら色々あって……人を…一般人を大分傷付けてしまって、あの…謹慎処分をくらいましてですねぇ……。

もうね、何でしょうかね。
嫌ですね、凝り固まった形式や価値観ってやつは。やってらんねーよ、マジで。
100:0で私は悪くないはずなのに、鉄格子の嵌められた部屋に入れられて監視されて、取り調べとか反省文とか何とか。
悪くないはずってか、絶対私は悪くないのに、何でこんな目にあわなければならないのか。怒り心頭、今なら憎しみの炎が良い火加減。

真知は激怒(げきおこ)した。
必ずかの一般人共を許しておけぬと。
真知には人の痛みが分かったり分からなかったりする。けれど、子供が不幸な目にあっているのには人一倍敏感であった。
なので暴れた。
考えるより先に身体が動いた。
脳内にあったのは「万死」の二文字であった。
私より先にキレそうになった傑さんが「ちょ、落ち着いて…!真知ちゃん落ち着いて!このままだと真知ちゃんがオーバーヒートで死ぬから、ああ鼻血出てる…!」と、宥められるくらいには暴れ回ってやった。これが平成の蛮族ですって歴史に名を残しちゃうくらい頑張って暴れ倒した。

そしたら捕まってしまった。
お家の人にも連絡が行ったらしい。
お母さん、泣いてないかな…いや泣かないな、多分何も思わないんじゃないだろうか。どうでしょう。
お父さん辺りは眉間にシワ寄せてそうだけれど…まあ、最早あの人達にとって私なんて失敗作の一つに過ぎないだろうし、心を痛めることもないはずだ。なら、別に構いやしない。ふんっ!べぇーっ!!だっ!!


そんなこんなで数週間の後、私は無事にシャバの空気を胸にいっぱいに吸えることとなった。はー、良かった良かった。一般人の頬骨折ったのも許されたってワケ。
何せ幼女なので。幼女に罪なんてあるわけないだろ、子供はこの世で最も純粋で綺麗な存在だってサン・テグジュペリも言ってたし。まあ、私はそんなこと微塵も思いませんけど。
子供って残虐で残忍で結構分かってるよね。つまり私も自分の行動で自分がどうなるか、どれくらい許されるか分かっていてやったということ。禪院真知はサン・テグジュペリに解釈違いでブロックされるタイプのガキなのです。


「おっ、真知ちゃんおかえり。夏油なら教室に居るよ」
「しょーこちゃん、ただいま。つかれたぁ〜」
「一般人の骨折りまくったんだって?やるじゃん」
「ちゃんとなおるとこのしか、おってないよ」

そういう問題じゃないと言われるとそれまでなのだが、私としては大分手加減してやった方なので勘弁願いたい。
めっちゃ手加減したんですよ、殺せたのに殺さなかったの偉くないですか?褒めて欲しいね。


でも、私がやったことは確かに悪だ。それは間違い無い。
力を持たぬ者を一方的に傷付け、彼等が培ってきた価値観や尊厳を否定し、侮辱的な言葉を言い放った。
けれど、それが間違いだったとは思いたくない。
反省はするが後悔はしないというやつだ。我ながら、中々良い性格になってきたなと思う。これぞ呪術師。

でも、賢く優しく慈悲深く…オマケに可愛くて健やかで愛情深いこの私が我を忘れて他人を攻撃してしまうくらいには、あの村で起きた事件は胸糞悪い出来事だったのだ。
あ、思い出したらまたムカムカしてきた…うぅぅ〜!早く帰って恵くんを吸わなきゃ…!自我が傷む…!!

というわけで、私は傑さんが居るらしき教室へと向かい、何だか知らないが黄昏れている彼に「じゃ、かえるんで!」とだけ言い捨てて、愛しの我が家へと早々に帰還した。


「ただいま、マイ・ハッピー・ホーム…」
「おかえり、ん?一人で帰って来たのか?」
「とうじさん、でんわでなかったから」
「そういえば、今日給料日だとか言ってたな…」

アトリエに帰っても誰も居ないであろうことを加味し、一先ず時雨さんの元へと戻った私は、甚爾さんが給料持って遊びに行ってしまった事実に心を無にした。

私よりもギャンブルが大切なんですね、知ってた…。そして別にあまりショックではない…何故なら慣れたので…。
世の中の彼に恋したり何だりしている女性達よ、悪いことは言わないからもっとマシな男を選ぶべきだ。私もそうする。賢い私に相応しい、素敵なヒロインを必ず見つける。みんな、頑張ろうね。オススメは七海くんだよ、彼はとても賢く優しく強い子だ。

時雨さんは帰宅早々真顔になった私を見て静かに笑い、頭をクシャリと撫でてくれた。
ほのかに煙草の香りのする部屋の中は、何だか妙に懐かしい気がした。
頭から離れていく手が名残惜しくて視線で追い掛ければ、彼は慈しむような笑みを浮かべてくれる。

「色々疲れただろう、ゆっくり休めよ」
「はぁーい」
「冷蔵庫にアイスもあるからな」
「オッパ、すき…」

きゅんきゅん、メロメロ。
私が主人公じゃなくてヒロインだったら、この人を掴んで離さなかったと思います。
やはり仕事の出来る男は普段からの気遣いも違いますね。なんて用意が良いんだ、こんなん好きにならないわけがない。
今からでも異世界攻略物語の路線を変更して、おにロリぽかぽかアングラ物語に変えられないだろうか。私はわりと本気だ。ちなみに、本気と書いて"一生を誓っても良い"と書く。

下心を込めて抱きついてやる。
しかし、時雨さんは何やら仕事があるようで、私をもう一度軽く撫でてから「少し出てくる」と言って外出してしまった。
一人になってしまった部屋にて、仕方無しに私はリビングの所定の位置へ行き、ゴロンと横になって目を閉じる。

煙草の香り、珈琲の匂い。
名前を知らない花の香りがするルームフレグランス。
ベランダから差す太陽の光に包まれ、私の意識は次第にトロリと溶けて微睡みだした。

時雨さんが怒ってなくて良かった。
きっとあの人に嫌われたら、私はショックで人間の形を保てなくなる。
帰ってきたらもっと甘えよう、それからアイスを二人で食べて、おやすみとおはようの挨拶が出来る毎日に戻るのだ。

ああ、私は恵まれているな。
願わくば、あの子供達にも幸福と思える日々が訪れますように。




____





スゥスゥ…スヤスヤ…。

陽だまりのナカで何も掛けず気持ち良さそうに眠る真知を見て、俺は一先ずタオルケットを手に掴んだ。

穏やかな寝息を立てる顔を見るのは、結構久し振りな気がする。

波瀾万丈な人生を歩んでいるわりには穏やかで賢く、柔らかな人間性であるこの幼女が、任務先で手に負えない程にキレて一般人を傷付け、謹慎処分として数週間の高専預かりになった時、俺は何が何だか理解出来なくなった。

「うちの子はそんなことしません!何かの間違いです!!」だなんて言う女親をテレビの中で見たことがあったが、まさにその気分だった。
何かの間違いだろ、絶対。
アイツに限ってそんな真似するはずがねぇ。
そう思ったのは俺だけではなかったらしく、時雨も五条の坊も、皆口を揃えて「真知がそんなことするか」と言った。
だが現実問題、アイツは共に任務に就いていた術師の証言によって暴れまくったことを立証され、怪我をした一般人や村には呪力の残り香とも言える残穢がしっかりと残っていたという。

何をやってんだ、と言いたくなった。
けれど同時に、お前がそこまでなるってことは、相当なもんだったんだとも思った。

高専に準ずる以上、真知には組織のルールが付き纏う。
だから彼女がどれだけ腹を立て嘆いても、彼女の行動は悪だと決め付けられる。
俺はそれが嫌だった。
俺の…俺の手を引いて、歩き方と前を見る理由を与えた存在が、くだらない権力とルールの下に悪と裁かれるのが嫌だった。
彼女が声を張り上げ、熱を出してまで押し通そうとした正義を否定されるのが嫌だった。


穏やかな寝顔を見ていると、胸の奥に溜まった黒いモヤが霧散していく気がする。
これは気がするだけで、また何かあるとすぐに寄せ集まり、心を陰り思考を暗い水に浸すようになる。

こちらの気など知らずに健やかに寝るガキのまろい頬に指を伸ばし、ツンツンと突っついてやる。
ぷにっと揺れる頬はまだ幼く、掌で簡単に覆い隠せてしまった。
そのまま指を滑らせ唇をなぞる。ふにりと柔らかくしっとりとした唇に沈む指先に、ささやかな寝息がかかる。
小さく開いた口の中に少しだけ指を差し込めば、寝惚けているらしくそのまま俺の指に吸い付き始めた。
 

まむり、チュゥ…チュゥ…。


何故かは分からないが、この時になってやっと「自分は何をやってんだ」という感情になった。
「まだ何もしてねぇからセーフだ」と何回も自分に言い聞かせていたが、これはアウトの範囲に片足突っ込んでいるんじゃねぇか…?と、正気に戻る。
いや、俺はロリコンじゃねぇ。こんなガキ相手じゃ起つモノも起たない。
………だが、最近たまに少しだけ思う。ギリ…マジでギリ、頑張れば起つかもしれねぇな…と。
最近コイツ、大分体付きがマシになってきたし…。

そこまで考えて、自分が片足をしっかりズップリ突っ込んでしまっていることに気付き、真顔になって真知を見下ろした。
自分が綺麗な人間だとは全く思わないが、何処まで汚れれば気が済むんだと笑いそうになる。


ぢぅ…チュパッ、チュパッ。


自罰的思考が働く中、スヤスヤとよく眠る真知はこちらの苦しみなど知らずに俺の指をしゃぶる。
もうやめろ、やめろと思うのに引き抜けない。さらには、赤ん坊のようにしゃぶる姿を可愛いとすら思った。

いや、待てよ…?
赤ん坊のように可愛い…この気持ちはもしかして、ロリコンのそれではなく…母性、なんじゃねぇか…?

言うまでもないが、この時の俺は数週間振りに真知に会えたということで、何処かテンションが可笑しくなっていた。
しかしそのことに自分では気付いていなかったため、俺は自分の指をしゃぶる真知を見下ろしながら、自分の胸に手を当てて暫し考えてしまった。

出る、だろうかと。

俺が養い、守り、育ててやるべきなんじゃねぇかと。
そのためには少しギャンブルは控えた方が良いんじゃねぇかと。


こうして俺は、賭け事を健全な範囲の金額で楽しむと決めた。
まあ、この決意が何ヶ月保つかは知らねぇが。

mae ato
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