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ってなことで、夏油くんの治療及び研究施設を急速に整え、共に暮らすことになる子供達が住まう場所を用意し、合間合間で兄の捜索をしていれば一気に時間は流れていく。

学年がそろそろ変わる頃、私には新たな悩みが発生していた。

そう、何を隠そう、私にお見合いの話がやって来たのだ。
つ、ついに私にまで来るようになるとか……私は呪術界の未来が心配だよ、大丈夫?だって私だよ?自慢じゃないけど自他共に認める狂人だよ?
なんでもお相手は、あの外面MAX会合の時に出会った方の息子さんらしい。へ、へ〜〜〜………なんか、詐欺をしてしまった気分だ……訴えられたら負けるぞ、どうしよう、助けてお兄ちゃん…(飼育員の方)

そんで、何故か私が誰かに話す前に広がっていた見合い話のせいで、現在私は面倒臭いことになっている。

移転した治療室にて夏油くんの経過をまとめていたら、突如ガラリと扉が開かれ、治療室の中に白い頭のデカくて細長い奴が転がり込んで来た。

「誰よその男ォ!!!!」
「五条くんじゃん、どしたの」
「見合いってなんだよ、お前選ぶとか呪術界終わってね!?」

多方面に失礼なのはこの際良いとして、誰よその男ォ!は私も同じ気持ちである。
誰だよこの男、どこ産の何者?得意分野は?愛読書は?好きな細胞なに?身体の何処まで実験に使って良いの???
その辺ハッキリして貰わないと困るんだよねぇ〜きみ〜〜、私もね、暇じゃないんだよ、分かるかい?で、右手をショベルカー、左手をダンプカーにする方向性で固めていっていいかな?

「あー、でもドリルとキャタピラも捨て難いかも…」
「人体実験の話してる?見合い相手で?」
「だって、私の元に来たいってそういうことでしょ?」
「ぜってー違う」

そうかな?だって私の物になってくれるってことじゃないの?私の物なら私が何したっていいじゃんかね。
大丈夫大丈夫、私、作品のことは大切にするタイプの研究者だから。責任は持つよ。

「つか、え?乗り気なの?」
「とりあえずツラだけ拝みに行こうかなって」
「灰原にチクッとこ」
「やめてよお!!!」

なんでそうゆうことするの!!意地悪しないでよ!!!
私はこの世で一番灰原くんのあの、シュン……としながらも健気に微笑む顔が何より苦手なんだよ!!勘弁してくれ、無いはずの胃がキリキリと痛くなってくる………。

ツラを拝むってのは建前で、一応資金援助をして貰った手前挨拶だけでもしておかなければなるまい…というのが本音だ。
私だってね、夏油くんのことがあってちょっとは成長したんですよ、彼の死は無駄にはしない。いや、死んでないけど。気持ち的な意味でね?ちゃんと蘇生させますとも。

ということで数日後、私は人生初、お見合いに行くこととなったのであった。



___




お見合い当日。

朝、寮の自室で準備をしていれば、部屋を訪ねて来た灰原くんは「うんうん、僕は全部分かってますからね」というような顔をされた。
なんだその顔は!!妙に慈愛と理解がある顔で私の未だにどうにもなっていないパジャマ姿を見下ろしてるんじゃないよ!!!こちとら三日前から「何着ていけばいいんだ……」って悩みに悩みすぎて、一周回って「ありのままの自分が一番だよネッ♪」って答えを昨日得られたんだ、私はこのしまむら上下1400円パジャマで行ってやる!!!覚悟なら出来てるぞ!!!

「そうなっちゃってるかなって思って助っ人を連れて来ましたよ!」
「え!?」
「七海に選んで貰いましょう!」

扉の影に居た、これでもかと嫌そうな顔をした七海くんは「休みたい…」と呟いている。
凄く疲れているみたいだ……可哀想に………。

「七海くん、私が試作したエナジードリンク飲む?」
「飲めば疲れが取れるんですか」
「とれるよ!!眉毛が虹色に発光するけどね!」
「最悪飲みます、今はまだ大丈夫です」

む、そうか……データを得られるチャンスだと思ったのだが…まあいいか、それよりパジャマだ、パジャマを……やっぱパジャマで良くないか?どうして私が見ず知らずの眼中に無い人間相手に媚びなきゃならんのだ、その時間があったらどれだけの研究を進められると………私の時間は安くないのだぞ、まったく。

私がパジャマか駄目かどうかを天秤で計っている隙に、後輩二人は断りを入れてから部屋の中へと入って来た。

クローゼットを指差して示せば、どちらが開けるか問答し始めたので、仕方無く自分でガチャッと開く。

「先に言っとくけど、衣装持ちじゃないからね」
「黒と白しかない…」
「この民族衣装は一体?」
「ペルーに行った時ちょっとね」

本気で本日のコーディネート担当をしてくれるらしい七海くんは、クローゼットの中を睨み付けるようにして見ながら考え始めた。

「七海くん、なんでこんなことしてくれるの?」

私は率直に疑問を尋ねる。
そうすれば、七海くんはややあった後に口を開いた。

「貴女がこれ以上やらかしたら首が飛ぶと…五条さんから頼まれているので」
「僕も五条さんから頼まれてます、最悪力付くでなんとかしろって!」
「ひ、ひぇ〜〜〜〜〜」

適当な格好で行こうとしてすみませんでした、目が覚めました。
そ、そうだったよ……私、首の皮一枚ギリチョンで繋がってる身だったよ…。
えっと、お見合いだよね、お見合いと言う名の資金援助ありがとうございますって言いに行くやつね。はいはい、完全に理解しました。

「スーツ出すか……」
「先輩スーツ持ってたんですか!?」
「いえ、スーツよりも落ち着いた雰囲気のワンピースなどを…」
「そんなものはない!!!」

見よ!!この、七海くんですら頭を悩ますクローゼットの中を!!!
右から順番に、「世界征服」と書かれたTシャツ、「gainen」と書かれたロンT、カーテンの柄みたいな柄シャツ、コルセットスカート、ペンシルスカート、ベイカーパンツ、ブラウス、ブラウス、白衣、白衣、白衣…………言い訳をすると、私は死んだことになっていたため遺品整理をされてしまっていたので、こんなことになっているのである。
うむ、こればっかりは仕方無い。

「……………スーツに、このボウタイブラウスを、そして髪型はハーフアップで…」
「お化粧は?」
「家入さん呼ぶ?」
「呼びましょう」

おっ……硝子ちゃん召喚する?
うん、そうしよう!!!そうしましょう!!
そうと決まれば君達、ちょっと出て行って貰えるかい?ああ、今度ちゃんとお礼はするよ、必ずね。

私は二人の背中をグイグイ押して、扉の方へと押しやった。

「え、あの…」
「うん、うん、ありがとうね」
「はあ」

二人とも本当にありがとう、こんなに先輩思いな後輩を持てて私は鼻が高いよ。
ってことでね、私は硝子ちゃんを召喚するから、また後で。

「分かりました、あとで最終チェックしに来ます!」
「うん、ありがとうね〜」

後輩二人を部屋から送り出し、私は硝子ちゃんを呼びに行くことにした。

百合の間にちんこはいらないってのは何度も討論されて来たことだ、つまりは私は戦争の火種を先んじて摘んだってワケ。
偉すぎ、流石としか言えないでしょ?



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