大きな子どものようなのになぁ。

隣の席で眠そうに遠くを見ている紫原を見て、そういった感想が浮かぶ。

部活の試合とか、練習だとかは怖いくらいの真剣さを持っているのに。

部活の時と普段のギャップを考えると、頭の片隅に不思議な気持ちが漂う。

紫原は紫原、だけれど。


「あ、教科書忘れた」


ぽつりと呟かれた言葉には焦った様子なんて全くなかった。

次の授業に使う物を机から引っ張り出しながら、暢気だなぁ、と自然と笑みが浮かぶ。

その緩い雰囲気も、紫原らしくて良いな、なんて。


「名前ちん、教科書一緒に見せてー」


言われた言葉は予想していたもので、また小さく、含み笑い。

私にそう言いつつも、紫原は気怠そうにだらりと机に体を預ける。

長身の彼には机がやけに小さく見えて、窮屈そうだ。


「いいけど、次って教科書じゃなくてプリントじゃないっけ?」

「え、そうだっけ」


私の言葉に少しの間どうだったろうかと考えたようだったけど、すぐに興味を失ったかのように欠伸をした。

本当に、紫原はわからない。

私は彼の試合というのをあまり見に行ったことはないし、練習風景といいうのも、友人に誘われて少し覗きに行ったくらいだ。

だから、彼がバスケをしているのを見たのは片手で数える程度。

それでもバスケをしている紫原というのは、こうやって普段に見ている彼とは全く違っていて、真剣で、圧倒的な雰囲気を持っているようで。

彼が凄い選手だというのは、素人の私でも感じることができた。

だから、この日常とのギャップが、本当に不思議で。

ただの子どものようなクラスメイトだと思っていたのにな。


「ねぇ紫原、チョコ食べるー?」

「食べるー!ありがとう、名前ちん大好き」


私の言葉に瞬時に机から起きた紫原はとても嬉しそうに笑った。

大好き、なんて。

チョコひとつでそんな言葉を聞けてしまうのは、少しお手軽な感じがして。

幸せそうにチョコを口へと運ぶ紫原を見ながら、ちょっとした幸せを確かに感じた。







この恋、何色。



お題配布元:確かに恋だった



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