失敗をしてしまった自分というのが、惨めに見えて仕方がなかった。

ぐるぐると頭の中を巡る考えは黒く煮詰まっていて、思考を焼いていくようだ。

情けないという文字が頭の中で浮かんでは、意識に深く浸透していく。

強いつもりでいたのに、と。

仲間達から少し距離をとって、彼等の背中を見ながらぼんやりと考える。

気にすることないよと明るく励ましてくれるのは有り難いけれど、それを受け入れることは簡単にはできなかった。

甘えているようだ、そう思ってしまうのは、妙なプライドが邪魔をしてしまうせいだろうか。


「随分と機嫌悪いんだな」

「…何?からかいに来たの?」

「励ましに来たって思えねぇの?」

「思えない」

「可愛くねぇの」


どうせ、可愛くなんてない。

そんなことは言われなくてもわかっていると睨んでみれば、アルヴィンは小さく笑って私の背中を軽く叩いた。

励ましに来た、なんて。

余計なお世話だと、いつものようにそう言ってしまえばいいのに。


「お前、いつも気を張りすぎなんだよ」

「…それ、私に言う?」

「他に誰に言うんだよ。優等生か?」

「私達よりも、アルヴィンの方が気を張ってるんじゃないの」


私の言葉に、一瞬、アルヴィンの表情が固くなったような気がした。

それは本当に僅かな時間のことで、気のせいだったのかもしれないけれど。

アルヴィンは苦笑のようなものを浮かべて、そう見える?と軽く言ってから頭の後ろで腕を組んだ。


「…私がそう見えただけだから」

「ふーん。ま、俺のことじゃなくて、今はお前だろ」

「…何が」

「あんまり引きずってると、また失敗するぜ」


言われた言葉に、ぎくりとする。

失敗して、引きずって、繰り返してしまう。

今回の失敗が、まさにそれだ。

気まずくなってアルヴィンから前を行く仲間達に視線を移すと、余計に気持ちが沈んでいく。

失敗したことは今までで何度かあったけれど、責められたことは、一度もない。

それが、逆に苦しい。

今回だって、たまにはそんな日もあるよね、と笑ってくれた。

些細な失敗だ、切り替えなくては、と。

自分に言い聞かせても、頭の中に浮かぶのは不安ばかりで、切り替えることはなかなか容易ではなかった。

重要な場面でも、今回のように失敗してしまったら。

些細な失敗でも、それが大事にならないとは限らない。

一度抱いてしまった不安というのはなかなか消えてくれなくて、参ったなぁ、と溜め息を吐けば、ゆっくりと肩に腕が回された。


「なーに考えてんだ」

「…何も考えてないけど」

「嘘つくの下手だな」


うるさい、と回されていた腕を慌てて払う。

アルヴィンは私の様子を見てからりと笑って、再度、軽く私の背中を叩いた。


「お前の失敗くらい、俺がフォローしてやるから」


そう言ったアルヴィンが何故かとても頼もしく見えて、余計なお世話、だなんて照れ隠しの言葉が零れる。

抱いていた不安が、軽くなったような、そんな気がした。





頼ることの必要性



-----

莢様より、ツンデレなヒロインのアルヴィン夢というリクエストで書かせて頂きました。
普段アルヴィンを書かないので、いつもと違って新鮮な感じがして楽しかったです!
ツンデレなヒロイン…に、なりましたかね…?

莢様、リクエストありがとうございました!






- ナノ -