今後、戦力から外す。

表情の読めない彼が淡々と事務的に告げたのはそんな言葉だった。

戦場での負傷。

戦場で陛下や国のために戦うのは、今の私の状態では確かに難しいことだろう。

わかっていた。

わかっていたけれど、それを受け入れられるほど私は冷静じゃなかった。


「なんで」

「お前の状態では、これから先の戦いで足手まといだからだ」

「そんなこと……!」

「俺の策の中では邪魔だ」

「……っ!」


言われた言葉は、正論だ。

それなのに自身の感情を上手く制御することができなくて、無意識にウィンガルに掴みかかっていた。

こんなこと、したい訳じゃないのに――


「…っ…私は!」


声が震える。

目頭が熱くなる。

頭の中はぐちゃぐちゃで、まとまりがつかない。

戦力から外されるということは、戦場で彼等と一緒に戦うことが出来なくなるということだ。

一般兵として戦いに参加することは可能だろう。

けれど、戦場にすら回されることはないかもしれない。

陛下や国、民のために戦っていた。

そうだけど、そうだけれど。


「私、は、陛下や国のためだけじゃなくて…」


貴方の支えになりたかった――

言葉にできない気持ちを、鋭い貴方は気付いている。

けれどそれが、彼にも私にもどうしようもないことを知っている。

泣いてしまいそうな顔を見られたくなくて俯く。

私が掴みかかったせいで皺がよった彼の黒い服を見て、悔しさや後悔がどっと胸に押し寄せる。

ああ、きっと、こうやってウィンガルと話をするのも最後なのだろう。

八つ当たりしてごめん、だなんて、今の私には言えない。

けれど、貴方の名前を呼ぶことは許されるだろうか。

好きで、支えたいと願った貴方の名を。


「ウィン、」


色々な想いを込めて呼んだ貴方の名は、少し強引に塞がれて呼ぶことは叶わなかった。

本当に、鋭くて、優しいなぁ。

頬を伝った涙だけがただただ熱くて、固く瞼を閉じることしかできなかった。







塞がれた口に、別れを紡ぐことは叶わない



(お題配布元:かなし)



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