凛とした背中。

その背はとても頼りがいのあるもので、この街の象徴で、とても優しいもので。

いつからか、その背に尊敬や憧れとは別の感情を抱いていた。

緩やかな日々が温かさを増し、彼と話をすると笑みが零れた。


「恋よ、名前」

「は?……恋?」


ドロッセルは楽しそうな笑みを浮かべてからゆっくりと紅茶を口に含んだ。

その仕種はとても上品で可愛いのに、言われた言葉のせいで上手く頭が回らない。

こい、恋。

確かに言われてみたらそうかもしれない。

恋なのかもしれない。

けれど、そうだとしたら、これは――


「身分違い!」


頭を抱えながら小さく唸ると、くすくすとこれまた上品な笑い声が耳に届く。


「私は名前とお兄様、いいと思うけれど」


驚いてドロッセルの顔を見ると、意志の強い視線がそこにあった。

本当に、ドロッセルのこの視線はクレイン様に似ていて参ってしまう。


「身分とか、そういうの関係なく、私は名前とお兄様は合っていると思うわ」

「……やっぱりこれって恋なのかな?」

「恋でしょ。もっと自信持って」


恋、そう認識すると急に恥ずかしくなってきて、言葉が出ない。

ドロッセルはこう言っているけれど、これは覚悟がいることではないだろうか。


「どうしよう」


自然と口からそんな言葉が零れる。

そんな私を見ていたドロッセルは、何かに気付いたような反応を見せた後、緩く微笑んだ。


「悩む時間はないみたいね」

「え?」

「私は応援してる」


振り返ると丁度外から帰られたクレイン様と目が合って、一気に顔が火照るのを感じた。






恋をする決意



(お題配布元:かなし)



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