ふとした時に感じる違和感が、少しずつ大きくなっていくのに気付いていた。

それがいつからだったのかなんて僕にはわからない。

わからないくらい、昔からだったのだろうか。

意識を蝕んでいくそれは黒く、どろどろとしていて。

そんなものを、君に対して向けたかったのではないはずなのに。

きっかけなんて単純で、簡単で、気付いた時には君の手首を手加減もせずに握っていて、組み敷いて。

驚きだとか、恐怖だとか、そういうものが入り交じった視線に見上げられる。

そういう視線が僕に向けられるのは、きっとはじめてだ。

真っ直ぐに、僕を、僕だけを、見てくれたのも、きっとはじめて。


「そういう表情も、僕は好きだよ」


いつものように微笑んだはずなのに、君の表情はどんどんと凍り付いていく。

そんな表情も、全て含めて手に入れたい、だなんて。

手に力を込めれば君の細い手首は軋んで、苦痛に表情が歪む。

首筋へと舌を這わせればびくりと肩を揺らして、抵抗するように腕に力が込められた。


「ク、クレイン、様っ……!」


発せられた僕の名前はやけに震えていて、恐怖に似た何かが含まれていて、頭の芯がじんわりと熱を帯びる。

ゆっくりと、焦らすように歯を立てれば、口の中に鉄っぽい血の味が広がった。







思考は君に溶けていく



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