彼は私が嫌いだ。

私の立ち位置であったり、言動であったり、容姿であったり、とにかく私というものが嫌いなのだろう。

私も彼のことが好きではないからお相子なのかもしれない。

切れ長な瞳も、佇まいも、行動も、声も、何もかもすべて、多分私も好きではない。

だから彼と二人で仕事をしなければならないと言われた時は絶句したし、きっと彼だって眉間に皺を寄せたことだろう。


「ウィンガルって、私のこと嫌いだよね」


書類へ目を通していた彼にそう告げると、横目で私をちらりと見てから、ゆっくりと口を開く。

その、面倒だと言わん限りの動作も整って見えるのが、嫌だ。


「お前だって俺のことを嫌っているだろう」

「うん、嫌い。珍しく気が合うね」

「そうだな」


挑発的にうっすらと浮かべられた笑みに、同じような笑みを浮かべて返す。

嫌い。嫌いなはずなのに。

お互いにそれを理解しているというのがなんだか少しおかしくて、不思議。


「ウィンガルがプレザと仲良く話してるのを見ると、どうしようもなく腹が立つの」

「俺もお前が陛下と話しをしているのを見ると苛立つ」

「本当に珍しく気が合うね」

「そうだな」







知らない始まり



(お題配布元:かなし)



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