* * *



何度か遊びに来た事がある、慎吾の部屋。
一応ノックすると、中から不思議そうな声音で「はーい」と返事が聞こえた。

ガチャ、とノブを回すと、驚いた顔の準太がベッドで寝そべっている。
それもそうだな。慎吾だと思ってただろうから。

「よう、準太」
「…何しにきたんですか?」

ぷいっとそっぽを向かれて、見ていただろう雑誌を乱暴に閉じた。
いろんな気持ちがあるけど、何より伝えたいのは、謝罪の気持ち。持っていた鞄を置き、床に膝をつけて頭を下げた。

「ごめん!」
「…何です…っえぇ!?」

俺の土下座に驚いたのか、準太が素っ頓狂の声を上げた。

「ごめん、準太。何度謝っても足りないかもしれない」
「ちょっと和さん!? やめて下さいよ!」

準太がベッドから降りて、俺に駆け寄ったのがわかった。
でも、ここで頭を上げるわけにはいかない。

「ごめん、準太。本当にごめん!」
「分かりましたから、頭上げて下さいって…!」

両肩を持たれて、無理やりに頭を上げさせられた。

そして、準太と向き合ったと思ったら、ふいに香った爽やかな匂い。
いつでも近くにあった、あのシトラスの香りだ。


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