* * *

慎吾の家に着き、荒い息のままに呼び鈴を鳴らす。
少し待った後、気怠げに出たのは 慎吾本人だった。

目に入ったその慎吾の服装を見れば、シャツのボタンが3つ目まで外れている。
それに、いつもしてるベルトも見当たらない。一瞬にして、頭にカッと血が上ったのが分かった。

「おー、和己」
「準太は!?」

「俺の部屋にいるけど」
「分かった。どいてくれ!」

「あーもう、ストップストップ!」
「っ、離せ!」

靴を脱いで上がった所で、慎吾に止められる。
振り向いて睨めば、いつになく真剣な表情をしていた。

「お前、覚悟できてんだろーな?」
「…覚悟?」

「生半可な気持ちじゃ、準太は渡さねぇ。あいつの傷が深くなるだけだ」
「……」

いつもと違う、射抜くような視線に空気が止まる。

「……慎吾」
「なんだ?」

「いつか言ったな。いっそ、準太が誰かとくっつけばいいのに、って」
「…ああ」

「馬鹿だな。大馬鹿だ、俺は」
「ああ、そうだな」

あっさりと肯定されて、つい笑ってしまう。
それに、慎吾もふっと笑った。

「…でも、おかげで気が付いた。慎吾も、それを狙ってたんだろ?」
「…さーな。何の事だかサッパリだぜ」

とぼけてるけど、間違いないだろうな。こいつはこう見えても、面倒見がいいし。
どうにも動き出せないでいる俺の背中を、押してくれたんだろう。

「覚悟はできてるさ。だから、…行くぞ」
「ああ。言っとくけど、まだ何もしてねーから」

「…そうか、良かった」
「ははっ。んじゃ、俺ちょっと出るわ。話し合いでも何でもしてくれ」

「…悪いな、部屋まで借りて」
「いーって。終わったらメールしろよ」

はだけてたシャツのボタンをしめながら、携帯をいじる。
もしかして、慎吾が服装を乱していたのは、わざとなのかもしれない。

俺にわざと怒りを生ませる為に。
…ただの意地悪かもしれないけどな。

「どこ行くんだ?」
「その辺ブラブラしてるよ。早く行けよ、準太に怪しまれる」

「ああ。…ありがとな、慎吾」
「学食奢り3回でいいぜ」

そう笑いながら、ドアを開けていなくなる。
俺は大きく深呼吸をして、準太のいる部屋へと向かった。



* * *


[*prev] [next#]
2/10

目次SRTOP






「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -