「今は、俺よりも自分のことだと思いますけど」
「え?」
「このままでいいんですか」
「…い、いいも何も… 俺が口出し出来る問題じゃないからな…」
自然に言うつもりだったけど、若干どもってしまった。
それに気が付いてなのか、タケが鋭い視線を向けてくる。
「俺は、見送るのキライなんスよ」
「え?」
「球がきたら打つ。当たり前でしょ」
「…タケ?」
いつの間にバッティングの話になったんだ?
俺が首を傾げると、タケが小さくため息をついた。
「ホームラン打てる球を、見送るバカがどこにいるんだって話をしてるんス」
「ホ…ームラン?」
「準太は『軽い付き合いなんて何でもない』って言ってましたけど、今日慎吾さんに抱かれたら、あいつはもう、『今のあいつ』には戻れない」
「は…? 何を…」
「…俺が言えんのは、ここまでッス。それじゃ」
「…あ、……」
また頭を下げられ、空になったゴミ箱を持っていなくなった。
誰もいなくなったゴミ捨て場で、機械的にゴミを捨てながら…さっきのタケの言葉が、胸の奥深くへ突き刺さってるのを感じる。
『ホームランを打てる球を見送るバカ』ってのは…俺のことだろうな。
手厳しいな、と思いつつ…それを言わせてしまったのは、他でもない、自分だ。
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