「和さんに比べて、いやら慎吾さんは月とスッポンですよ」
「その比喩表現は置いといて、何だそのいやら慎吾ってのは」
「俺も聞いたぞ。山ちゃんが『遠慮なく広めて』って言ってた」
「はぁぁああ!?」
「はい、なので使ってみました」
「使うな!」
3人でワイワイしながら校門まで行くと、利央と同じ制服の子が一人佇んでいた。
それに、利央が「おーい」と声をかける。知り合いみたいだな。
「和さん、こいつもね、来年桐青に行くんスよー」
「へぇ、そうなのか」
人見知りするのか、もじもじしながらぺこっと頭を下げられる。
猫っ毛の髪を揺らしながら、ふわっと笑った。
「一緒に野球部入るんだー。ね、迅!」
「う、うん…」
「へぇ。じゃあ、来年よろしくな」
「はいっ!」
礼儀正しい子だなと思ってると、今まで黙っていた慎吾がじーーっと迅君を見つめている。
その視線に気が付いたのか、迅君が利央の後ろに隠れるように移動した。
「ちょっと慎吾さん。じゃなくていやら慎吾さん」
「言い直すな。何だよ?」
「変態な目で迅を見ないで下さい。変態が移ります」
「おい和己。こいつに数学教えるより先に、礼儀教えた方がいいんじゃねーのか?」
相変わらず、こいつらの掛け合いは面白いな。
それにクスクス笑ってると、迅君も同じように笑っていた。
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