「あーあ。またかよ、お前」
「慎吾… 何がだ?」

いつの間に後ろにいたのか、俺の肩に手をやりため息をつく。
外国人みたいにオーバーリアクションで呆れられ、ぺしっと後頭部を叩かれた。

「何が、じゃねぇよ。分かってるんだろ、本当は」
「……何が」

「ったく、見ててじれったいぜ。さっさとくっつけば?」
「…何を言ってるんだ。そんなんじゃ…」

「俺は、なかなかの美人だと思うけど?」
「そういう問題じゃない」

慎吾の手を払いのけながら、目を逸らす。
分かってる、準太が本当は何を言いたいのか。

俺に対する気持ちが、痛いくらいに伝わってくる。
けど、ダメなんだ。

「モタモタしてっと、他人に掻っ攫われるぞー」
「…その方がラクかもな」

苦笑して言えば、慎吾がまたため息をつく。
慎吾みたいに、自由奔放に生きてないんだ、こっちは。
いや、悪口ってワケじゃなくて、俺には俺の考えがあるってことだ。

「難儀だね、お前も」
「自分でもそう思ってるさ…」

俺にできることは、準太の気持ちに気づかないフリをすること。
俺の気持ちがバレないようにすること。

ただ、それだけだ。





* * *


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