「本当は、全然納得なんかできてなかった。必死に、そう思い込むようにしてたんだ。田島と付き合ってる時も、ずっと罪悪感を感じてたんだ」

「罪悪、って、何で…」

「俺と付き合えば、ツライのは田島だから…俺で本当にいいのか、って、ずっと思ってたんだ」

そう。俺と付き合っていけば、もちろん田島は道を踏み外す。
冷たい世間の目を気にしなければならない。

だから、俺と付き合わなければ、田島は堂々としていられるはずだ。
堂々としてる田島が、俺は好きだったから。

「ツライって、何でだよ! 俺は、花井が好きなのに、何でツライんだよ!」
「本当だよな…。結局、離れられなかったのは、俺だったわけだし…」

苦笑しながら田島の頭を撫でれば、さらに泣きそうになる顔。
これ以上泣かせたら、目が溶けちまいそうだ。

「お、俺だって、本当は別れたくなかった、…けど」
「…けど?」

「別れて、でも、もっかい付き合いたいと思ってた。離れてる間に、俺が、花井がもっと、好きになってくれるように、変わればいい、って…思った、から…」

途切れ途切れに、でもちゃんと言葉で伝えてくれる。

バカだ。
俺も、こうなる前にもっと言葉を紡げば良かったんだ。


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