「おっせーよ、バァーカ」
「は…? え、え?」
「危なくマジで田島んとこ告りに行くとこだったじゃねーか」
「え…、?」
理解できずに混乱しているのに対し、巣山はニヤニヤ笑ってるだけだった。
もしかして俺、はめられた、のか…?
「俺が田島に告白しに行くなんて、ウソに決まってんだろ」
「…はぁぁあ!? お、おまえ、だましたのかよ!?」
「ああ。つい、マジで演技しちまったじゃねーか」
「な、何だよそれ!? バカにしてんのか!?」
「何言ってんだ。感謝しろよな、自分の気持ちに気付かせてやったんだろ?」
「はぁ? 何がだよ!」
「さっき、『待てよ』って言ったろ? 俺がマジだったら、花井は何を言おうとしたんだ?」
「……そ、それは」
急に恥ずかしくなって、かああっと顔に血が上る。
それを見た巣山がまた笑い、ぽんと俺の肩を叩いた。
「行けよ。続き、田島に聞かせてやれ」
「巣山……」
「今行かないと、後悔すんぞ。それこそ、マジで俺がもらっちまうからな」
「……巣山、どっからがウソだったんだ?」
「…じゃあ、田島によろしくな」
俺の問いかけには答えず、走っていなくなってしまった。
それに多少の違和感を感じるも、今、俺がするべきことは。
(田島……!)
鞄を担ぎなおし、すぐ目の前にある田島の家へ向かって走り出した。
* * *
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