* * *

痛む頬を擦りながら、部室へ向かう。
そこにはもう誰もいなく、俺の鞄だけがぽつんと残っていた。


(泉は知ってたのか。俺たちが別れてたってこと)

(他には、誰か知ってたんだろうか)

(水谷と栄口は、知らなかっただろうけど)

(田島が言うなって言ってたし)


そんなことをボンヤリ考えながら、鍵を閉める。
鍵がかかったことを確認しながら、ポケットにそれを入れて…今度こそ帰るか、と思ったのに。
目の前には、今 最も見たくない人物がいた。

「巣山……」
「おう」

…帰ったんじゃなかったのか。
あからさまに目を逸らしてしまう。

「ちょっといいか?」
「……何だよ」

思わず声が低くなる。
巣山は俺の気持ちなんて知らないようで、微笑んですらいるように見えた。


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