* * *
結局、断ってしまった。
もったいないぐらいの申し出だったけど…今の俺には、これ以上モノを考える余力なんてものは残ってない。
誰かの代わりを求めるなんて、今の俺にはそんな大人なことはできないみたいだ。感情に関して要領の悪い自分に、少しの苛立ちを感じる。
少しでもイライラを落ち着けようかと、部室の前に図書室へと向かった。
今月の部活のスケジュール表を、人数分コピーする為に。
別に今しなくてもいいし、篠岡に任せてもいいんだけど、何となく今すぐには田島の顔を見るのが嫌だったから。
そう、思っていたはずなのに。
(巣山…?)
対面の校舎。
廊下から見えたそこで、誰かが抱きしめあってるのが見えた。
視力がいい俺に、見間違うわけもない。
あれは巣山だ。
そして、一回り小柄な相手は。
(嘘だろ………)
サーッと血の気が引いたのが分かる。
手の力が抜け、思わず持っていた鞄を落としてしまった。
ひらりと舞ったプリントが、静かに床に落ちていく。
俺はそれを拾うどころか、足の力も抜けてしまい。
同じように、床に崩れ落ちてしまった。
***
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