「部活優先でいいよ。たまに会ってくれれば、それだけでいいから」

随分軽く言う人だな、と思った。
本当に俺のこと好きなのかな、と失礼ながらにも感じてしまう。

だって、好きなら『ずっと一緒にいたい』って思うんじゃねーのかな。
それとも、俺が田島からのスキンシップに慣れてしまったから、そう思ってしまうのか?

「そんな深刻な顔しないでよ、アハハ」

先輩の長い髪が、ふわっと風に舞う。
それと同時に、少しの想いが揺らめいた。

田島を忘れるには、付き合ってもいいのかもしれない。
フラれてからも、頭ん中はずっと田島のことばかりだし。
この人が、田島を忘れさせてくれる……かも。

「ね、どうかな。花井君の都合に全部合わせられるよ?」

魅惑の言葉に、俺の気持ちがまた揺れ動く。
見た目は可愛い。スタイルもいい。髪もサラサラ。
生徒会だからたぶん、真面目なんだろう。まぁ、これはあくまで俺の偏見だけど。

「ねぇ、それとも私ってタイプじゃない?」

ちょっとむくれながら言われて、少し焦った。
もし、これで部の予算を減らされたら困るな、って。…変に冷静だな、俺。

「そ、そんなことないッスよ!」
「そう? じゃあ、タイプ?」

にっこり笑われて、戸惑いながらも「そうですね」と答えた。当たり障りのない答えでも、先輩は満足したように笑った。

すると、突然バタンと大きな音を立てて扉が閉まり…すぐに扉の方を見たけど、誰もいなかった。

「ビックリしたー。風かなぁ? 今日強いもんね」
「はぁ、そうスね…」


屋上から見上げた空は、どこまでも遠い気がした。





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