「俺はとっくに、栄口がいないとダメになってるよ? 離れてる間、ずーっと元気出なくて息苦しかった」
「ん… 俺も…」
「もっと、俺に依存してよ。俺がいないと呼吸出来ないぐらい、栄口に必要としてほしいんだ」
「水谷…」
切ないような、困ったような顔で微笑んでくる。
そうやって水谷は、とろけるような言葉と視線で、俺の心を縛っていくんだ。
甘い拘束に酔わされて、捕らわれたら最後。
もう、逃げられない。
どうしようもなく水谷が恋しくなって、また自分からくっついた。
離れてた分を取り返したい、水谷の温度を体全部に感じたいと思う。
無言ですりすりと甘えてると、水谷が嬉しそうに笑った。
後頭部をまるまるっと撫でられて、さっきまで泣いてた疲れと相まってふわふわしてくる。
「…あ、そうだ。相沢、明日でいなくなるって言ってたよね?」
「そうだけど…」
何を言われるのかと思ったけど、水谷は至って普通の顔と声音。
相沢に何かするのかな…?
「ちゃんと、バイバイしないとね。こういう事あったけど、たぶん事情があったんだと思うから」
「…何で分かるの?」
「あの時はカーッとなってたけど、今思い返したら… 何か、辛そうだったから」
「……うん」
『俺が、どんな気持ちでお前の事…!』
確か、そう呟いてた。もしかして、俺のこと…?
「俺も、思いっきり殴っちゃったし。明日、俺も相沢と話すよ」
「うん…」
人の心に敏感な水谷には、相沢の何かを感じ取ったのかもしれない。
明日、昼休みに相沢と3人で話をしようって事になった。
どんな顔で相沢に会えばいいのか分からないけど…
水谷が一緒なら、きっと大丈夫。
* * *
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