「…水谷、どこにいたの…? 校舎歩いたけど、いなかっ…」
「西広と花井と阿部の4人で、勉強してたんだ。図書室閉まっちゃったから、美術室借りて」

「あ、そうなんだ…」
「西広が、放課後に古文と英語教えてくれるっていうから。本当は田島と三橋もいたんだけど、飽きた田島が三橋連れ出しちゃって…」

1時間もいなかったよ、って笑いながら教えてくれる。

そうだったのか…
美術部がいると思って、美術室には入らなかったもんなぁ…そこに、皆いたんだ。

「阿部も、一通り終わったから先に帰るって言って。教室に忘れ物取りに行くって言ってたから、その時に気付いたんだと思う」

その言葉に、さっきの相沢を思い出してまた悪寒が走る。
もし、阿部が途中で帰るって言わなかったら…忘れ物してなかったら、あるいは…

「…でも、俺も悪いと思う。いつもいつも、栄口のこと心配ばっかりしてるから…」
「…そ、そんな事ない! お、俺が、俺がいう事、聞かなかったから…!」

またうるうると涙が込み上げてきて、頬を流れる前に水谷が指で拭ってくれる。
「泣かないでってば〜」って言われても、勝手に出てくるんだもん…!

「栄口はね、自分で思ってるより、ずっと人目を引くんだよ。惹かれるっていうのかな… 栄口が笑うと、そこが ぱっと明るくなるっていうか…」
「…そんな、言い過ぎだよ」

「ううん、本当。…これは、俺の自惚れなのかもしれないけど、俺と付き合ってからだと思う。初めて会った時も可愛かったけど、今はもっともっと可愛くなってる。それが、嬉しい反面、心配だったんだ…」

悪い虫まで寄って来そうで、と呟きながら、強く抱きしめてくる。
さっきの怒ってた水谷とは180度違い、しゅんと落ち込んでるように見えた。


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