えぐえぐと泣き出した俺に、水谷が小さく舌打ちをして。
周囲に誰もいなかったけど、人目を気にしたのか「家に入ろう」と言った。
それに返事する前に、また腕を掴まれて促される。

「…み、水谷… ごめ…!」
「……」

俺の言葉に返事する事なく、一緒に玄関のドアを抜ける。

(…ついに、水谷に拒絶される時が来たのかもしれない)

当たり前だ。
こんな勝手なコトして、愛想つかされたとしても、全然不思議じゃない。

怯えてまともに歩けない俺を支えてくれながら、ただ俺の部屋を目指して引っ張られる。

これが、水谷が俺の家に来る、最後の日になるんだとしたら…
そんなの絶対ヤだけど、どうしたら水谷を繋ぎとめられるんだろう。

戻せるのなら、時間を戻してやり直したい。
あのケンカした日に戻って、やっぱり水谷とデートするって言いたい。


そんな、今になっては
どうしようもない事を考えながら、部屋のドアを開けた――




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