「暴れると、この細い腕が折れちゃうかもな〜。それでもいいのか、野球部員」
「脅してんのかよ、それ…!」

「俺だって、痛い目に遭わせたくねーよ。けど、そっちが暴れ続けるなら、大人しくしてもらおうと思ってるだけ」
「ふ、ふざけてんじゃ…!」

沸々と怒りが込み上げてきた時、急にガラッとドアの開く音が聞こえた。
咄嗟に見ると、そこに立っていたのは…

「あ、阿部…!」
「…何だ、お前らか」

助かったんだとホッとしてると、反対に相沢がチッと舌打ちをした。
良かった…これで、何とか逃げられそう!

「ガタガタうるせーと思ったら、浮気中か。お邪魔さまー」
「え!? ちょ、ちょっと待ってよ!」

そのまま立ち去ろうとする阿部を、必死に止める。
俺の言葉に、阿部はつまんなそうにして携帯いじってるだけ…
な、何で助けてくんないの!?

「何だよ、俺は忙しいんだよ。勝手に浮気してろ」
「ち、違う! 浮気なんてしない! 相沢が勝手に…!」

「フン、自業自得だろ。クソレの忠告無視したの、お前なんだろーが」
「ちょ、阿部!!」

俺の制止の声を聞かずに、そのまま さっさといなくなってしまった。
う、嘘だろ…!?

「…話が分かるヤツみてーだな。三橋にしか興味ないってのは、本当か」

相沢がホッとしたように呟く。
反対に、さっきの阿部の言葉が胸にのしかかってきた。

自業自得? 忠告を無視…?
だって、こんな事になるって思うわけないじゃないか!

それとも、水谷が言ってたみたいに、俺は何も分かってなかったって事…?


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