* * *


「お前、盛大に放置されてるらしいな」
「…ふーんだ」

ニヤニヤする阿部に、口を尖らせてムッとする。
廊下で口喧嘩したのを、阿部と花井に目撃されてたみたいで…その日から、阿部が嬉々としてからかってくるんだよね。

「珍しいな、お前らが喧嘩するなんて」
「うぅ〜… さかえぐちぃ〜…」

机に突っ伏しながら 栄口の名前を呼んでも、もちろん返事はない。
心配そうに声をかけてくれる花井の言葉にも、グサッと胸に来たりして。

「あの相沢ってヤツ。見た事あるけど、結構イケメンだよな」

「阿部、あんまり本当の事を言うな」

「それフォローになってないよ…」

花井も心配するフリして、本当はからかってるんじゃないの?
でも、栄口と言う元気の糧を失った今、ツッコむ気力なんて微塵もないわけで…

「ああいう、一見爽やかそうな奴が、実は裏表あったりするんだよな」
「阿部まで、栄口が危ないって言うのか?」

「いや、クソレをイジめたいだけ」
「はぁ…」

阿部の言葉に、ため息ひとつだけ返したのが気に入らないのか、「つまらん」と言って席に戻って行った。

栄口に叩きつけられた言葉が、痛いほど身に覚えがあり過ぎて動けないんだ。
信用してないわけじゃないし、相沢と遊びに行くのだって巣山も一緒なんだから、危ないわけない。

友達にまで嫉妬して、尚且つその不満を栄口にぶつけるなんて…


はぁ〜あ…




* * *


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